治療・予防

腕を前に上げにくくなる―翼状肩甲
過度の負荷は禁物(あさひ病院整形外科 伊藤岳史部長)

 腕を上げると肩甲骨が背骨の辺りで浮き出る翼状肩甲は、見た目が“天使の翼”のようであることからその名が付いた。比較的まれな病気だが、肩甲骨に負担がかかる運動などを続けていると、気付かないうちに翼状肩甲になることもあるので注意が必要だ。

肩甲骨を意識的に動かすことで肩甲骨が安定する

 ▽神経まひと筋力低下

 あさひ病院(愛知県春日井市)整形外科の伊藤岳史部長によると、肩関節の痛みで受診した1万人のうち2、3人に翼状肩甲が見られると報告されているという。

 翼状肩甲は、肩甲骨と肋骨(ろっこつ)をつなぐ前鋸筋(ぜんきょきん)の働きが悪くなることで起こる。前鋸筋は、肩甲骨を安定させるために使う筋肉だ。

 片肘を曲げて枕代わりにする肘枕の姿勢で長時間過ごしたり、重いリュックサックを背負ったりして肩甲骨周辺に負荷がかかると、前鋸筋に近い長胸神経が障害を受けやすくなる。他には、腕を頭上に上げて行うバレーボールやテニスなどのオーバーヘッドスポーツや、ウエートトレーニングのし過ぎでも長胸神経に障害が起こりやすい。「長胸神経が障害されてまひすると、長胸神経にコントロールされている前鋸筋の筋力が低下して肩甲骨を支えられず、翼状肩甲に至ります」と伊藤部長は説明する。

 ▽負荷軽減で自然回復も

 翼状肩甲になると、主に肩甲骨の周囲に痛みを感じたり、腕を前方に突き出しにくくなったりする。長胸神経を障害するような動作を避け、まひがなくなれば、自然に回復することが多い。1年以上経過しても、肩や腕の筋力や動きが改善しない場合は手術が必要になることもあるという。

 翼状肩甲は、壁を押すような体勢になると肩甲骨が浮き出るという特徴があるが、よく観察しないと見逃すこともある。また、筋ジストロフィーや肩甲骨周囲の骨や軟部組織(筋肉や神経など)にできる腫瘍などが原因で翼状肩甲を発症することもある。肩甲骨の動きをよく見て診断することがポイントになるため、診断には経験を要する。気になる場合は、専門医のいる整形外科への受診が勧められるという。

 翼状肩甲の予防は、まず肩甲骨に過度な負荷をかけないこと。「ウエートトレーニングやオーバーヘッドスポーツでさまざまな肩関節障害が起こるため注意が必要です。肩甲骨を動かしながら障害を予防することができる簡単な体操もあるので、日常生活に取り入れてみてください」と伊藤部長は勧めている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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