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昼間の眠気は「睡眠時無呼吸症候群」かも?
~糖尿病、脂質異常症、高血圧の原因にもなる~ 医学博士 福田千晶

 布団の温かさが恋しい時期になると、朝になっても布団から起き出したくない日はありますよね。「この季節だけではなく、いつも寝足りない感じがある」とか、睡眠時間は確保しているのに「睡眠が不十分な気がする」という悩みはないでしょうか? もしかすると、睡眠中に眠りが中断されて、疲れが癒やされていないのかもしれません。

昼間に眠くなるのは、夜の眠りが中断されているからかも

 ◇睡眠時無呼吸症候群とは

 睡眠時無呼吸症候群は、最近では広く知られている病気で、英語では「Sleep Apnea Syndrome」略して「SAS」とも呼ばれていて、睡眠中に何度も呼吸が止まってしまう病気です。有名人でもこの病気での悩みを有する人は多いようです。SASになる人は太ったオジサンのイメージがありますが、実際は痩せている人や若い女性でも、SASで悩んだり心配したりしている人や、睡眠時に呼吸が止まることを家族に指摘され、SASが疑われる人もいるのです。

 先日は、女優でタレントの西村知美さんの「私が睡眠時無呼吸症候群と診断されたのは6年前」という報道を見つけました。

 自分でSASと気付いている人と気付いていない人がいますが、適切な生活上の注意や治療をしたい人も多いことでしょう。

 SASのほとんどは、空気の通り道である上気道が狭まり、あおむけで睡眠中に舌の根元や口蓋垂(こうがいすい:俗名では「のどちんこ」)が喉の内部で垂れ下がり、気道をふさいでしまうのが原因です。太ることによって首の周囲に脂肪が付くと、喉の気道をふさぎやすくなりますから、太ったことをきっかけにSASを発症し、痩せることでSASを解消できることもあります。他にも、下顎が小さい人や舌が長い人も気道がふさがれやすく、SASになりやすいのです。

重症と診断された50代男性の終夜睡眠ポリグラフィー検査の結果

 ◇いびきを伴うことが多い

 一般には、その狭くなった気道を空気が通るため、まるで笛を吹いたときのように大きな音となり、「いびき」を発します。そして、狭くなっている気道がすっかりふさがってしまうと呼吸ができず、いびきが停止します。しかし、息ができずに苦しいので脳は覚醒し、呼吸が戻って再びいびきが聞こえるのです。そのため、同室で寝ている家族に、「寝ているときにいびきが止まり、息をしていない様子」と指摘されてSASを疑うこともあります。

 10秒間以上も呼吸が止まっている状態を「無呼吸」、普段の半分以下しか呼吸ができていない状態を「低呼吸」と称しています。無呼吸や低呼吸が1時間に5回以上ある、もしくは一晩で30回以上ある場合にSASと診断されます。

 起きている時に息を10秒間止めてみてください。とても苦しいと感じるでしょう。SASでは、寝ている間に10秒以上もの無呼吸や低呼吸を繰り返しているのですから、体内は酸素不足になってしまいます。また、呼吸ができず苦しくて睡眠が中断され、目覚めてしまうこともあります。ですから、深い睡眠は取れず、まだ眠い状態で迎える翌日の日中には、強い眠気が表れることになります。

 会議中にも居眠り、デスクワークの途中にも居眠りしがちです。さらに、自動車運転中や危険を伴う機械操作中にも睡魔により、ウトウトしたり、寝入ってしまったりして事故の原因にもなります。また、常に疲労感がある、集中力低下、記憶力低下、起床時もグッスリ眠ったという爽快感がなく、一日を気持ちよくスタートできないなど、仕事や日常生活に支障を来す要因がいろいろあります。

 常に睡眠不足状態ですから、その疲労とストレスで、糖尿病や脂質異常症にもなりやすい上、低酸素状態を補うために全身に酸素を届ける血液を強く多く送り出そうとして心臓が強く収縮するので、血圧も上昇しがちです。

 高血圧、糖尿病、脂質異常症は動脈硬化を促進させ、脳梗塞、脳出血、心筋梗塞などの発症にも関与しています。さらに、SASは突然死を引き起こすこともあります。SASは事故の発生率も上昇させ、生命に関わる病気になるリスク要因でもあり、死亡率が高くなる病気の一つと言えますから侮れません。

 また、心身の疲労の蓄積から、うつ病などのメンタル疾患の発症にも関わることがあります。

マスクを装着して気道に空気を送り込むCPAP療法

 ◇何科を受診するの?

 同居者にいびきが停止することを指摘されたり、日中の強い眠気や常に疲労感があったり、十分な睡眠時間を確保しているはずなのに起床時にまだ寝足りないならSASを疑い、医療機関を受診しましょう。

 さて、何科を受診するかという問題がありますが、最近では「睡眠外来」「睡眠センター」などの名称で、睡眠の問題を専門に診療を行う所もあります。一般的には「耳鼻咽喉科」もしくは「呼吸器内科」で、SASの診察が行われている場合が多いです。受診する前に、医療機関に電話などで問い合わせをすることをお勧めします。

 受診して検査を行い、SASと診断されると、治療としては、鼻マスク式持続陽圧呼吸(CPAP)療法が広く行われています。鼻に密着するマスクを装着して、マスクとつながっている機器から空気に圧を加えて、鼻を経由して気道に空気を送ります。圧を加えて送り込まれた空気により気道は開いた状態を維持でき、SASの症状が改善されます。

 CPAPで症状が改善し、日中の眠気から開放されて「すごく楽になった」と喜ぶ患者さんも多いですが、その一方で装着するCPAPのマスクが不快で眠れず、継続して使用できない人もいます。また、CPAPはあくまでも対症療法なので、CPAP使用で症状が改善されてもSASが治ったわけではなく、生涯ずっと使用し続けないといけません。

上の写真で使用しているCPAP装置

 下顎が小さく後退している人などは、マウスピースの使用が有効な場合がありますが、これも対症療法ですから、SASが治るわけではありません。根治的な手術療法としては、喉をふさぐ要因を除去する形成術がありますが、手術を受けた全員が完治できる治療法ではないようですから、医師とよく相談することが大切です。

 肥満がきっかけでSASになった人は、まず肥満の解消が大切です。また、あおむけで寝るとSASの症状が表れやすいので、横向きで寝ることが勧められます。横向きで寝るのにちょうどよい高さの枕を選ぶと、あおむけでは高過ぎると感じられるため、横向きの姿勢を保ちやすいようです。

 夜に飲酒をすると、アルコールの作用で筋肉は緩みます。顎や舌の筋肉も緩むため、だらりと垂れ下がり、気道をふさぎやすくなります。SASまたはその疑いのある人は飲酒も控えることが望まれます。今年の秋冬は徐々に飲み会が増えるかもしれないですが、SASで悩んでいる人、SASの疑いがある人は飲み過ぎないように、くれぐれも気を付けてください。(了)


福田千晶氏

 ▼福田千晶(ふくだ・ちあき)

 慶応義塾大学医学部卒業、医師として東京慈恵会医科大学病院リハビリテーション科勤務を経て、クリニックでの診療と産業医業務を行う。勤務医時代に、エッセーや論文のコンテストでの受賞などをきっかけに執筆活動も開始し、健康に関するテーマで著書や監修書は多数。

 日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、日本人間ドック学会人間ドック健診専門医、日本リハビリテーション医学会専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本体力医学会健康科学アドバイザー。

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