Dr.純子のメディカルサロン
メンタルヘルスへの取り組みが優良企業のカギ?
~英国の投資運用機関がグローバル展開視野に評価基準を公表~
100社の取り組み評価が企業名と共に公表された
◇メガバンクが新たな対策を発表
日本の感覚では、点数付けされ公表されたら大変だ、と思うのではないかと思います。英国の企業はどうなのでしょう?
そこで、CCLAの担当者エイミー・ブラウンさんに公表後の企業の反応について聞いてみました。すると、「かなりの数の企業が、次回の評価までにメンタルヘルスに関する報告を増やす、または改善する予定であると述べています。その結果、次のベンチマーク評価では、グループ全体で良好なスコアの向上が見られると予想される」ということでした。
今回の評価をネガティブに捉えず、これからの向上を目指すという視点が素晴らしいと思いました。本来の目的が反映されていると思われます。
さらに最新の情報として、CCLAが評価を発表した4日後の5月30日、グループ2に評価されたメガバンクのHSBCホールディングスがホームページで、この秋に行われるグローバル評価では100%の評価を達成することを明記して今後の企業内メンタルヘルスへの取り組みを発表しています。
さて、この調査結果で私が特に注目したのは、ダイバーシティーに関する質問への回答です。ダイバーシティーに関して明確な理念を持ち、それをメンタルヘルスと関わることと認識している企業は33%あり、67%の企業においてダイバーシティーに関する理念を持っているという結果です。つまりダイバーシティーに対して認識を持たない企業はゼロだということで、これは日本とは大きな違いになるのではと感じました。
賃金格差や女性管理職問題などが単に労働問題ではなく、それがメンタルヘルスと関わるという視点の指標は、今後日本を含めて行われるグローバルな評価の展開の中で大きな影響力を持つと思われます。
◇健康経営と投資
米国では、禁煙や生活習慣病の予防にかける費用の効果が、従業員の疾病による休職などによる損失を上回るという視点に基づく「健康経営」という考え方が広まり、日本でも先に述べたように経済産業省による優良企業認定などで行われています。こうした健康経営とCCLAのメンタルヘルス評価基準が違う点は、企業自体がメンタルヘルスに取り組む枠組みを体系的に示したものであり、子会社を持つ企業では雇用形態の異なる従業員を含めて評価の対象にしていることです。
また、そうした取り組みが持続可能な社会を作るために必要だと投資家の視点で捉えている点も異なります。もともと欧州の企業や投資家は環境や持続可能な社会や多様性を重んじますが、この新しい視点に基づいて企業におけるメンタルヘルスへの取り組みがグローバルに展開されることが、世界中の企業トップの人たちの考え方の変化につながると考えられます。(了)
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(2022/06/29 05:00)
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