インタビュー

骨粗しょう症予備軍2000万人=斎藤充医師に聞く(上)

生活習慣病の人が細胞を酸化させる活性酸素を発生させやすいことは知られている。活性酸素による「さび」は、血管だけでなく骨のコラーゲンを老化し、骨をもろくする大きな要因となる。通常、骨粗しょう症は骨密度70%以下で診断されるが、男性の場合は骨密度80%でも骨折のリスクが高い。男性は骨密度が高くても、より注意が必要だ。

日本の診断基準では、まず脆弱(ぜいじゃく)性骨折があるかないかを確認し、ある場合はすぐに治療を開始する。骨折の経験がなくても、危険因子があれば将来の予防のための治療が勧められる。骨折の経験がない場合も、骨密度が80%未満であれば治療が推奨されている。

◇恐ろしいドミノ骨折

大腿骨近位部骨折の性・年代別発生率とその推移(「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」より)

―痛みもなく骨折することはよくあるのか。

斎藤 骨粗しょう症になり骨がもろくなると、背中の骨はじわじわとつぶれていく「圧迫骨折」が起きやすくなる。50歳の女性の場合、10人中4人が脊椎骨折、5人に1人が大腿骨骨折を起こしている、決してまれなことではない。骨粗しょう症患者の10人中6人は激しい痛みを伴わず、背中が丸まっていたり、急に身長が低くなったりして、レントゲン検査で気付くことが多い。

骨粗しょう症性骨折は1カ所骨折すると、4人に1人は別の部位も骨折して広がっていく「ドミノ骨折」を発症する恐れがある。大腿骨の骨折を引き起こして歩行困難になる可能性も高く、寝たきりになって死亡リスクが7~8倍と一気に上昇する。

1997年から10年間、三重県の60~98歳の男性210人、女性419人を対象に行われた調査では、10年生存率は骨折なしの場合は86%、骨折が1~2カ所の場合は76%、骨折が3カ所以上は50%と、骨折が少ないほど10年生存率が高い。すなわち、骨粗しょう症の予防や治療で骨折を防ぐことが寝たきりを防ぎ、健康寿命を延ばすことにつながると考えられている。

背中が丸くなって背中を伸ばした状態で後頭部が壁につかなかったり、3~4センチ以上身長が縮んだりしたら、レントゲン検査で骨折の有無を調べた方がいい。(ソーシャライズ社提供)


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