インタビュー

疼痛治療、急がれる体制整備 =間違った情報、多大な経済損失―北原雅樹医師

 仕事のパフォーマンスが上がらない、家事や身の回りのことも思うようにできないなど、痛みに伴う悩みを抱えている人は多い。超高齢社会に突入した日本にとって、その経済的損失は計り知れない。国内で痛みの治療はどのように行われているのか。横浜市立大学付属市民総合医療センターペインクリニックの北原雅樹医師に聞いた。

 ◇慢性痛と急性痛

 ―慢性痛とはどういう痛みを指すのか。

 北原 世界保健機関(WHO)が作った国際疾病分類(ICD)は10年ごとに改訂され、登録済みの疾病の見直し、新たな疾病の追加が行われる。来年の改訂に向け、慢性痛の登録を新たに決定。「3カ月以上続く持続性または反復性のある痛み」と定義された。

 慢性痛については、専門家の間でもかんかんがくがくの議論があり、患者本人も本質を理解していないことが多い。痛みには胃潰瘍、急性胃炎骨折など組織の障害に起因する「急性痛」と、頭痛や腰痛、リウマチ、線維筋痛症など原因が分かりにくい「慢性痛」がある。

 慢性痛は組織の治癒期間を終えても続く。最終的に脳でさまざまな情報が統合(処理)されて痛さを感じる仕組みで、痛みによって起こる障害に対処しなければならず、急性痛の治療とはアプローチがまったく違う。

 ―急性痛と慢性痛の対処法は

 北原 急性痛では、原因の病気や障害を治しやすくするため痛みを軽減する処置を取る。安静にしたり神経ブロックを行ったり、薬物療法などでも痛みが治まる。診断結果により治療法が大体決まっており、治療に伴い痛みは軽減される。しかし慢性痛は原因が分からず、手を尽くしても何も改善しないとして放置される場合も少なくない。


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