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冬のうつに気を付けて

 急に寒くなったかと思うと生暖かい日もあり、着るものを選ぶのに苦労する今年の冬ですが、日照時間が短くなる冬に気を付けたいのが季節性情動障害です。「冬季うつ」と呼ばれ、最近はだいぶ認識されるようになりました。暗くなるのが早くなる季節になると気分が落ち込んでやる気がなくなり、春になると改善するという傾向がある人は予防対策を取ってはいかがでしょう。

(文 海原純子)


 ◇短い日照時間が影響

 冬季うつの原因ははっきりしていませんが、脳の神経伝達物質であるセロトニンや、松果体から分泌され睡眠のリズムに大事な働きをしているメラトニンの減少により、生体リズムが乱れるためではないかとされています。発症には日照時間が関わっていて、緯度の高い地方に住む人の方が症状に気付くケースが多いとされます。日光に当たることが予防のポイントになっていると言えます。

 最近の面談で気分が低下気味という1人暮らしの若い男性の話を聞いたところ、オフィスに窓がなく、家ではカーテンを閉めていることがほとんどでした。日当たりが悪い部屋に引っ越したり窓がない環境で仕事をしたりしている人は注意が必要で、後に述べる対策を取ってください。リモートで会議する際に画面が光らないようにカーテンを閉めている人も、一日中太陽に当たる機会がないので注意が必要です。

 ◇いつも眠く、過食も

 具体的な症状としては①過眠傾向(いつも眠い、なんとなくだるくておっくう)②活動低下(外出したくない、人付き合いが面倒)③気分の落ち込み(活気がない、楽しいことがない、興味を引くものがない、集中力が低下)④過食(アイスクリームやチョコレートなど甘いものや炭水化物の摂取量が増える)―などがありますが、中には症状が軽いために気が付かず、甘いものの食べ過ぎで体重が毎年冬に増えるという人もいます。男性より女性が多いとされていますが、男性でもコロナ下のリモートワークで外出しない日が続く場合は注意してください。

 ◇太陽光浴び、生活リズム保持を

 冬季うつの予防としては、太陽の光を浴びることが一番の対策と言えます。

 1.カーテンを開ける
 特に朝、太陽の光を浴びれば14~16時間後に松果体からメラトニンが分泌され、自然な睡眠のリズムがつくれます。朝起きたら窓を開けて日の光を浴びましょう。曇っていても1万ルクス程度の照度はあるので、積極的に太陽の光に当たる時間をつくることが大切です 。

 2.バイオレットライトの活用
 屋外環境に豊富に存在する波長360~400nm(ナノメートル)の紫の光(バイオレットライト)は、目の網膜にある受容体に作用して脳の機能に影響を与え、うつなどの予防に役立つのではないかとされています。ただ、この波長の光はガラスで遮断されてしまうので、戸外で太陽に浴びる必要があります。昼休みに買い物などで外に出る時間をつくるのも有効です。

 3.生活リズムをキープ
 起床時間を一定にして生活リズムをキープすることは、自律神経の働きを一定にして体調不良を予防する効果があります。生体リズムの乱れは冬季うつの要因とされています。休日などについ遅くまで寝てしまうような傾向がある人は、起床時間を普段より2時間以上遅くしないよう気を付けてください。

 4.たんぱく質を取る
 神経伝達物質のセロトニンを生成するには、たんぱく質の中の必須アミノ酸であるトリプトファンが必要です。豆腐、魚、肉、野菜を使って鍋料理などをすると、たんぱく質が取れます。また、朝はヨーグルトや卵料理などを食べて炭水化物や甘いものの過食を防ぐなど、食事のバランスをキープすることも重要です。

 5.体を動かす
 体を動かすと気持ちに変化が起きることが知られています。無理のない範囲で散歩やストレッチなどを生活に取り入れて習慣にしておけば、うつ予防に役立ちます。(了)

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