歯学部トップインタビュー
臨床に強く、世界で活躍できる歯科医師育成
~少人数教育で基礎固め―明海大学歯学部~
◇PDI歯科診療所で卒後教育
全国の3カ所(埼玉県入間市、東京都新宿区、千葉県浦安市)にPDI歯科診療所があり、卒後臨床研修、生涯研修機関として活用している。
「埼玉県の入間市にPDI歯科診療所ができたのは1980年。国が1年間の卒後研修を必修化する前から2年間の卒後臨床教育を独自に行っていました。すべての科目の実技をはじめ、経営戦略の講義もあります」
PDIは卒業した歯科医の生涯研修の場としても活用されている。例えば、PDIのレクチャールームでは、日本全国の著名な講師をはじめ、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)からも講師を招いて、年間60コース以上の生涯研修を実施している。
「歯周病にしても、昔は歯みがきをして歯石をとって、外科治療ができればそれで良かったのですが、現在は糖尿病や心臓疾患なども含めた全身管理ができないといけません。糖尿病を例にとってみると、歯周ケアがうまくいくと血糖コントロールが改善しやすいので医科との連携も不可欠です。口腔インプラント治療も昔はレントゲン写真だけで手術していましたが、今はCTを撮影し、3次元的にシミュレーションし、安心・安全に行われる時代です。昔習ったことと今教えていることは違うので、常に知識と技術をアップデートして、選ばれる歯科医師にならないと生き残っていけません」
インタビューに答える申歯学部長
◇自分の教えた学生がどんどん成長していく
申歯学部長は大阪で生まれ、栃木県の高校を卒業後、明海大学の前身である城西歯科大学に進んだ。4人兄弟の長男。身内に医療関係者はおらず、特に歯科医師を目指してきたわけではなかった。
「今の学生さんは、自身や身近な人がさまざまな歯科治療を受けた結果、感銘を受けて、自分も歯科医師を目指すようになったというケースが多く、本当に意識が高いんですが、恥ずかしながら私には、そのような意識はなかったですね」と率直に話す。
ものづくりが好きで建築系の学部に進みたいと考えていたが「何か手に職を」と希望する両親の勧めで歯科医師の道を選んだ。
「安心して暮らしていくためには、医療系が良いと思ったのでしょう」
歯学部入学後、専門科目を学ぶにつれ、歯科の面白さに目覚めた。
「組織切片を見たり、人体解剖にすごく興味を持ったりしました。解剖にはスキルが必要ですが、私は手先を動かすのが好きだったので、臨床に行けば行くほど面白くて。レベルの高い開業医を目指しました」
PDI歯科診療所で研修中、当時の所長に治療の腕を買われて教員への道を勧められ、そのまま大学に残って現在に至る。
「早く開業して両親に楽をさせてあげたかったのですが、教授の身分を拝命したこともあり、開業の道は断念しました。でも、講演も臨床教育も好きですし、自分の教えた学生がどんどん上達していくのを見るのは楽しいです」
国際学会での発表や海外の第一線の研究者との交流は、かけがえのない経験として心に残っている。
「カリフォルニアのUCLAの教授とは長いお付き合いで、PDI歯科診療所の生涯研修にも来てもらったりしました。若い人には、どんどん外に出て行ってほしいですね」
申歯学部長の長女は同大学PDI歯科診療所の指導医として勤務しており、長男は研修医1年目。子どもたちもまた、父親の背中を追っている。
明海大学歯学部 坂戸キャンパス 中央棟
◇何か一つのことを、あきらめずに突き詰めてほしい
将来、歯科医師を目指す学生へのアドバイスとして、申歯学部長は次のように話す。
「何でもいいから興味を持ったことを突き詰めてほしい。オールマイティーも大切ですが、いくつか得意なものがあると、あるとき得意なもの同士がつながり、それまでは苦手としていた事が短期間で底上げされることも多々あります。集中して諦めずに一つのことを深く習得してゆくことが全体のレベルを引き上げる近道だと思います」
また、歯科医師となった後も、生涯研修を継続し、自分の専門分野を持つことが必要だと強調する。
「歯周病治療、口腔インプラント、歯科矯正はもとより、超高齢化が進む中で、高齢者や要介護者の口腔ケアをどのように進めていくのかも大きなテーマです。訪問ケアも行うとなると、歯科医師の手は足りません。これからの時代、歯科医師がやらなければならないことはどんどん増えていきますから、歯科医師の活躍の場はたくさんある。将来に希望を持ち、しっかりと知識と技術を身に付けた歯科医師が増えてほしい」(ジャーナリスト/中山あゆみ)
申基喆(しん・きてつ) 1983年3月城西歯科大学(現,明海大学歯学部)卒業。2003年 2月明海大学教授(歯学部 口腔生物再生医工学講座 歯周病学分野)、08年4月明海大学歯学部附属明海大学病院 病院長(2016年3月31日まで)、20年4月から現職。
【明海大学歯学部 沿革】
1970年 城西歯科大学を開学
77年 大学院歯学研究科博士課程を設置
80年 歯科臨床研究所付属PDI埼玉歯科診療所を開設(明海大学PDI埼玉歯科診療所)
88年 千葉県浦安市に外国語、経済学部を設置し、大学名を明海大学と改称(総合大学となる)
92年 浦安キャンパスに不動産学部を設置
2004年 明海大学PDI東京歯科診療所を開設
05年 明海大学PDI浦安歯科診療所を開設
浦安キャンパスに「ホスピタリティ・ツーリズム学部」を設置
19年 浦安キャンパスに「保健医療学部」を設置
20年 創立50周年
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(2023/01/18 05:00)
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