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「出自知る権利不明確」「母親のケアも大事」
~内密出産めぐる日弁連シンポジウムで識者ら議論~ 法整備求める意見相次ぐ

【内密出産とは】
 妊娠を知られたくない女性が、病院の一部の職員にのみ身元を明かして出産し、子どもが将来望めば出自に関する情報を得られる権利を担保した出産方法。「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)と違い、予期せぬ妊娠をした母、その子どもに生命の危険がある病院外での「孤立出産」を防ぐ目的がある。
 相次ぐ赤ちゃんの遺棄事案を減らそうと「こうのとりのゆりかご」を開設した熊本市の民間病院「慈恵病院」が2019年に導入し、現在までに8人が出産した。
 ドイツの制度を手本としているが、日本では法律上の規定がないためルール作りを国に要望し、国が22年9月に自治体や病院の対応方法をまとめた指針を公表した。
 指針については、手順などが一定の範囲で明らかになったとの評価もあるが、子が自らの出自を知る権利に基づき情報開示を求めた際に母親の同意を得る手続きや、母親の身元情報の管理など多くの負担が病院に「丸投げ」された形になっているとの指摘がある。
 指針は前提として内密出産を推奨するものではないことを明記している。法的、倫理的な問題を指摘する意見も多く、日本ではまだ内密出産を認める社会的な合意ができているとは言えない。
 内密出産で生まれた子どもについては、児童相談所から必要な情報を得た市区町村の首長の職権で戸籍を作成する。
 熊本市の大西一史市長は22年12月の記者会見で、「子どもは特別養子縁組を前提とする養育も含め、里親委託等によって家庭的な環境下で養育ができるよう支援している」と述べた。(時事通信社「厚生福祉」2023年2月10日号より転載)

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