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近視性網脈絡膜萎縮症におけるヒト(同種)皮下脂肪組織由来間葉系幹細胞シート(PAL-222)移植の第Ⅰ/Ⅱa相臨床試験(治験)の開始 公立大学法人 名古屋市立大学
ファーマバイオ株式会社

 令和4年12月、公立大学法人名古屋市立大学(名古屋市、理事長:郡 健二郎)とファーマバイオ株式会社(本店所在地:名古屋市、代表取締役:草野 仁)は、「近視性網脈絡膜萎縮症に対するヒト(同種)皮下脂肪組織由来間葉系幹細胞シート(PAL-222)移植の臨床試験(PAl Myopic Chorioretinal Atrophy:PAMyCA試験、登録番号 NCT05658237/jRCT2043220105)」(以下、「本試験」といいます。)の実施に関する契約を締結し、この度、第一例目(First-in-Human)の移植手術が成功したことを報告いたします。
 PAL-222は、名古屋市立大学大学院医学研究科の視覚科学分野 安川 力教授による世界初の独自開発技術、すなわち、細胞自身が産生する細胞外マトリックス成分※1のみから構成されるブルッフ膜様構造を伴う細胞シート作成技術を基盤とし、ファーマバイオ社が内因性の足場構造を伴う細胞シート化技術として独自に応用、発展させ、この技術によりヒト(同種)皮下脂肪組織由来間葉系幹細胞をシート化した再生医療等製品です。なお、PAL-222は、臨床試験開始に先立って実施された非臨床試験(毒性、造腫瘍性試験等の安全性試験ならびに網膜保護効果を確認する薬効・薬理試験など)により安全性および有効性が確認されております。
 本試験は、近視性網脈絡膜萎縮患者を対象に、PAL-222を移植したときの有効性及び安全性を探索的に確認する、第Ⅰ/Ⅱa相、非遮蔽・非無作為化比較試験であり、組み入れ予定症例数は10例です。
 「近視性網脈絡膜萎縮(黄斑部萎縮)」は、眼軸長(眼球の前後方向の長さ)が伸びることに起因する強度近視(図1)に関連して生じる重篤な病態の一つであり、近視性網脈絡膜萎縮、近視性脈絡膜新生血管※2、近視性牽引黄斑症※3(網膜分離症、黄斑円孔、黄斑円孔網膜剥離を生じる)等に関連した眼底疾患を引き起こすとともに、日本における視覚障害者手帳交付の原因疾患の内訳においても、第5位が近視性網脈絡膜萎縮、第10位は強度近視1)となっており、その医学的解決は社会的に強く望まれるところであります。近視性網脈絡膜萎縮の発症原因解明は未だ十分でありませんが、近視に伴う眼軸長の延長を端緒として、「網膜」ならびに「脈絡膜」の菲薄化、網膜機能を維持する「網膜色素上皮※4」の細胞密度の低下および機能障害が起こり、脈絡膜毛細血管の萎縮、さらに網膜および網膜色素上皮自身が萎縮する悪循環により、網脈絡膜萎縮が発生すると考えられております。また、脈絡膜新生血管等によるブルッフ膜欠損と関連して進行する症例においては、網膜の中心である黄斑部の萎縮(黄斑部萎縮)2)に至ることで、視力が低下するとともに萎縮の拡大のため視野欠損の範囲が拡大し(図2)、一般的に両眼性に進行することからも、日常生活に重大な支障をきたすことになります。現時点では、近視性網脈絡膜萎縮に対する有効な治療法は存在せず、最終的に社会的失明に至るとされています。

1)(日本眼科学会雑誌.118:495-501, 2014若生里奈、安川力ら)
2)(日本近視学会ウェブサイト 近視性黄斑症の国際分類, 大野京子 on behalf of META-PM study group.
近視性黄斑症の国際分類. 877-883 e7, Am J Ophthalmol 2015より引用改変)



 今回、移植手術を担当した名古屋市立大学病院の医療チームは次のように述べています。「この移植手術の成功は、これまで治療法が存在しなかった近視性網脈絡膜萎縮に苦しむ患者さんにとって、大変喜ばしい前進となるはずです。手術を受けられた患者様と御家族の皆様、そして関係者の皆様のご協力に感謝するとともに、一日も早くこの製品が承認されることを期待しています。」


[PAL-222について]
PAL-222は、名古屋市立大学大学院医学研究科の視覚科学分野 安川 力教授の独自技術である、世界初の細胞自身が産生する細胞外マトリックス成分のみから構成されるブルッフ膜様構造を伴う細胞シート作成方法を、ファーマバイオ社が応用して開発した内因性の足場構造を伴う間葉系幹細胞シートです。細胞懸濁液※5の移植と比較して、①細胞生着率向上②(視機能改善、維持につながる)移植細胞の機能発揮 ③合併症リスク軽減等の可能性をもつとともに、間葉系幹細胞の特性である同種拒絶反応を起こしにくく、種々の成長ホルモン、サイトカインを分泌することにより、周囲の組織機能の保護効果を有することが期待されます。

[ファーマバイオ株式会社について]
○和名 ファーマバイオ株式会社、英名 PharmaBio Corporation
○代表取締役 草野 仁
○設 立  2010年(有限会社より移行して設立)
○事業内容 再生医療等製品の研究開発
      再生医療等製品の開発製造受託サービスおよび受託検査サービス 


【用語解説】
※1 細胞外マトリックス成分:細胞が接着したり、組織を形作ったり、外力に抵抗するために必要な成分で、細胞から作られるコラーゲン線維(膠原線維)や弾性線維、その他、多くの物質からできています。

※2 近視性脈絡膜新生血管:眼軸長伸長に伴って網膜色素上皮を支えるブルッフ膜が断裂し、時に、傷の修復反応が誤って脈絡膜から網膜下に侵入する異常(新生)血管を発生させます。新生血管から漏れる血漿や出血を放置すると視野の中心部に歪みや暗点が生じます。現在、眼内注射薬が認可されていて、視力改善・維持される場合も多いですが、一部の症例が黄斑部萎縮に進展します。

※3 近視性牽引黄斑症:眼軸長伸長で網膜が後方へ偏位していくため、網膜に付着した眼内のゲル(硝子体)が相対的に網膜を前方へ牽引する力が発生します。それにより、網膜が分離したり、黄斑に穴(円孔)が開いたり、その円孔に伴って網膜剥離が発生したりします。放置すると視力低下、視野欠損、失明の可能性が高いですが、硝子体手術で治療できる場合も多いです。

※4 網膜色素上皮:網膜の一番外側にある1層の細胞で、網膜の視細胞のメンテナンスや栄養物質や老廃物の輸送、脈絡膜からの血液の成分の移動を遮断して、網膜の光を感受する高度な機能を支えています。網膜機能維持に網膜色素上皮は不可欠で、萎縮すると脈絡膜毛細血管、網膜の視細胞も萎縮してしまいます。

※5 懸濁液:固体微粒子が混じった液体を意味しますが、この場合、バラバラの細胞を含む液体のことで、シート状でなくバラバラの細胞の状態で移植する手段を示します。


【試験に関する問い合わせ先】
名古屋市立大学大学院医学研究科 視覚科学分野
教 授 安川 力(やすかわ つとむ)
准教授 平野 佳男(ひらの よしお)(治験責任医師)
〒467-8601 名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1
TEL:052-853-8251   FAX:052-841-9490
E-mail:yasukawa@med.nagoya-cu.ac.jp
yossyeye@med.nagoya-cu.ac.jp

ファーマバイオ株式会社
取締役プロジェクト推進部 部長 杉岡 俊彦(すぎおか としひこ)
〒103-0027 東京都中央区日本橋2-1-3 アーバンネット日本橋二丁目ビル 10階
TEL: 03-6205-4101   FAX: 03-6205-4102
E-mail:ir_admin@pharmabio.co.jp

【報道関係者問い合わせ先】
名古屋市立大学 病院管理部経営課
〒467-8602 名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1
TEL:052-858-7113  FAX:052-858-7537
E-mail:hpkouhou@sec.nagoya-cu.ac.jp


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