治療・予防

大人の扁平足に注意
~歩行障害のリスクも(藤井外科胃腸科・整形外科 谷野善彦院長)~

 土踏まずがなく、足の裏が平たんな扁平(へんぺい)足。子どもに特有と思われがちだが、大人になってから発症する成人期扁平足には注意が必要だ。藤井外科胃腸科・整形外科(香川県高松市)の谷野善彦院長は「進行すると足が変形し歩行が難しくなるケースもあります」と注意を呼び掛ける。

歩行障害のリスクになる扁平足(右)と正常な足

歩行障害のリスクになる扁平足(右)と正常な足

 ◇加齢でアーチが崩れ

 足が地面に接したときの衝撃を吸収するため、足の裏はアーチ構造になっている。アーチ構造を支えているのは、ふくらはぎの筋肉の一つである後脛骨筋(こうけいこつきん)だ。後脛骨筋は、足首の内側を通り、腱(けん)となって足の内側中央にある舟状骨(しゅうじょうこつ)につながり、足の縦アーチをつり上げている。歩行時に爪先で地面を蹴る動きにも、後脛骨筋が関わっている。

 そんな重要な役割を担う後脛骨筋腱だが、加齢とともに筋力が低下し、さらに体重増加などにより腱や周囲の靱帯(じんたい)が摩耗すると、アーチ構造を支え切れなくなる。

 「これは後脛骨筋腱機能不全という、成人期扁平足の主な原因です。中高年女性や太り過ぎの人に多く見られます」。長時間の立位や歩行、無理な運動などが引き金になって発症する。足に合わない靴やヒールの高い靴も要注意だ。

 成人期扁平足は、初期には足底の扁平は目立たず、足首の鈍痛、内くるぶしの下の腫れなどで異常に気付くことが多い。階段を下りるときなど体重がかかると痛んだり、爪先立ちがしにくくなったりするという。

 「症状が進行すると足関節の柔軟性がなくなり、つまずきやすくなったりします。成長とともに自然に治ることが多い小児期扁平足と違い、成人期扁平足は放置すると歩行障害を起こしかねません」

 ◇足専門外科で受診を

 谷野院長によると、成人期扁平足は自覚症状、患部の変形や腫れなどから比較的容易に診断が可能だという。重症度の判定はMRI(磁気共鳴画像装置)やX線などで検査する。

 治療は、発症初期は安静にして、消炎鎮痛薬などで痛みや腫れを抑える。また、靴の中敷きを工夫してアーチ構造を支える方法も効果があるという。重症化して保存的治療の効果が期待できない場合は、手術を検討する。

 「重症化を防ぐためには、症状が軽いうちに適切な治療を受けストレッチ運動などをすることが重要です。気になる症状があれば、足の外科などの専門医の受診をお勧めします」

 成人期扁平足の専門医がいる医療機関は日本足の外科学会のホームページ(https://www.jssf.jp/general/hospital/)から検索できる。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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