女性医師のキャリア
日本のトップアスリートを支えるために
~女性のチームドクターが果たす役割とは~ 女性医師のキャリア 医学生インタビュー
日本スポーツ整形外科学会(旧)のtraveling fellowとして米国へ研修に行った際、HSS(Hospital for Special Surgery)でのプレゼン写真
◇整形外科医以外にも広がり
整形外科医の男女比は女性5.6%、男性94.4%(2021年)と、昔から男性が圧倒的に多い診療科です。最近は医学部志望の女子学生全体が増えていることから、今後、整形外科医を目指す女性は確実に増えていきます。整形外科を受診する患者さんの半数は女性であり、女性特有の症状を理解できる女性医師のニーズは年々高まっていますので、活躍の場はどんどん広がっていくでしょう。
また整形外科以外にも、内科医やメンタルヘルスのサポートに精神科医が入ったり、女性アスリートの場合は、婦人科医が月経異常の選手のサポートをしたりすることもあります。必ずしも遠征に帯同するのではなく、オンラインで診療したり、サポートしたりするドクターもいて、アスリートにとって、多方面の医師がさまざまな関わり方をすることも必要なのではないかと考えます。
私が通常勤務している宮崎大学付属病院では、出産・育児で休職されている女性医師が復職するシステムが整ってきています。12歳までの子供を持つ医師には子供の送迎をサポートする県医師会のシステムもあります。チームドクターについてはまだ課題がありますが、多様な働き方が認められ、サポート環境が整えば、スポーツドクターを目指す女性がもっと増えていくのではないでしょうか。
◇女性スポーツドクターの活躍の場を広げるために
スポーツドクター、特にチームドクターの仕事は選手の対応だけではありません。選手の後ろにはコーチがいて、未成年者の場合は保護者もいます。選手を囲む全ての人間関係の構築が求められますので、普段から誰にでも対応できる対人力を磨いておくことが大切です。また選手のサポートも体やけがの治療だけではなく、特に育成年代は心のサポートが中心で、保健室の先生のような役割も欠かせません。人の痛みや弱さを理解して、しっかり話を聞いてあげる寛容さが必要です。言葉に出さない選手に対しても、異変に気付き、言葉を掛けて信頼関係を築くようにしています。そういう意味でも、女性が得意とするやりがいのある領域ではないでしょうか。女性アスリートの技術向上やスポーツ医学のさらなる発展のためにも、働く環境の整備が進み、スポーツドクターの活躍の場が広がることを願います。(了)
聞き手:石ヶ森威彬(杏林大学医学部5年)・吉田慈映(杏林大学医学部5年)・白川礁・稲垣麻里子、文:稲垣麻里子、企画:河野恵美子(大阪医科薬科大学医師)
山口奈美医師プロフィル
東京都出身、福岡県育ち。スイス公文学園高等部卒業後、1995年宮崎医科大学(現宮崎大学)医学部入学。2001年に宮崎医科大医学部整形外科学講座入局。現在、宮崎大学医学部付属病院整形外科に勤務する傍ら、サッカー日本女子代表のチームドクターとして活躍している。日本整形外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本整形外科学会スポーツ認定医。スポーツ歴はスイミング(小1~4)、剣道(小4~中2)、ソフトボール(中学3年間)、サッカー(小5~社会人6年目)。
(2023/08/07 05:00)
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