認知度低いが危険
~アニサキスアレルギー(昭和大学病院 鈴木慎太郎准教授)~
アニサキスは海の魚や甲殻類などにいる寄生虫。その成分が原因で生じるのがアニサキスアレルギーだ。診断が難しい上にあまり知られていないが、重症の場合は命に関わることも。アニサキスが引き起こす病気に詳しい昭和大学病院(東京都品川区)呼吸器・アレルギー内科の鈴木慎太郎准教授に話を聞いた。
治療では加工品を含む魚介類を避ける
◇食中毒とは別物
ウイルスや細菌などの病原体から体を守る免疫は、本来は無害な食品などに時に過剰に反応してアレルギーを起こす。
そのメカニズムはこうだ。アレルギーの原因物質(アレルゲン)が繰り返し体内に侵入すると、異物を排除するために「IgE抗体」が作られる。アレルゲンの刺激を何度も受けるうちに、免疫がアレルゲンに対していつでもIgE抗体を作りだす「感作(かんさ)」という臨戦態勢状態になる。
次に同じアレルゲンが侵入してきた際に、IgE抗体の働きによって、かゆみやせきなどを誘発する物質が過剰に放出される。
アニサキスアレルギーは、アニサキスの虫体や分泌物に含まれるタンパク質がアレルゲンとなる疾患だ。刺し身などに潜む生きたアニサキスを食べることで、アニサキスが人の胃や腸に刺し入り、猛烈な腹痛や吐き気、嘔吐(おうと)に襲われる食中毒のアニサキス症とは異なる。ただし、アニサキス症を機にアレルギーを発症する可能性はある。
「アニサキスに対する感作が成立すると、生きたアニサキスだけでなく死骸に対してもアレルギー反応が起こります。アニサキスの成分が偶然含まれていた、加熱した魚やかつおだしなどの加工食品を摂取して症状が出る人もいます」
◇怖いアナフィラキシー
鈴木准教授によると、同院で新たにアニサキスアレルギーと診断される患者は年間300~500人に上る。主な症状は、じんましん、腹痛や下痢などの消化器症状の他、血圧低下など命に関わるアナフィラキシーも見られる。アレルゲンを含む食物を食べて数時間~12時間ぐらい後に、症状が出現する例が多い。
診断法、治療法はまだ確立されていない。アニサキスやその成分を含む可能性のある魚介類や、それらを原料とする加工品の摂取を避けて、定期的にIgE抗体の値を検査しながら経過観察するしかないのが現状だ。
「この病気は認知度が低く、詳しい検査ができる医療機関でないと診断が困難なケースがあります。魚介類が含まれる食品を食べた後でじんましん、腹痛などのアレルギー症状が現れたら、アレルギー専門医がいる医療機関の受診をお勧めします。24時間以内に食べたものをメモして医師に伝えると診断の助けになります」と鈴木准教授は話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/03/16 05:00)
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