食物と運動が引き金
~食物依存性運動誘発アナフィラキシー(埼玉医科大学病院 永田真アレルギーセンター長)~
食後に運動をしていたら、急にじんましんやせきが出てきて息苦しくなった―。このような症状が見られたら、「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」を疑って迅速に対応する必要がある。この病気の特徴や対処法、予防法について埼玉医科大学病院アレルギーセンター(埼玉県毛呂山町)の永田真センター長に聞いた。
食物依存性誘発アナフィラキシーの仕組み
◇食後の運動で誘発
典型的な食物アレルギーでは、特定の食物(原因食物)を食べると多くは30分以内にじんましんや呼吸困難、腹痛などの症状が表れる。これに対して食物依存性運動誘発アナフィラキシーは、原因食物を食べるだけでは目立った症状は出ない。ところが原因食物を食べて4時間以内に運動を行うと、全身に強いアレルギー症状(アナフィラキシー)が表れるのが特徴だ。
「かつては10歳代が中心のアレルギー疾患とみられていましたが、最近は20~30歳代にも増えてきている印象です」と永田センター長。
原因食物で多いのは小麦と甲殻類。大人では果物による発症も増えている。症状を誘発する運動は、球技やランニングなど運動負荷の大きいものが多いが、散歩などの軽い運動で発症するケースもある。悪化要因としては疲労、寝不足、ストレス、高温、寒冷、飲酒、解熱鎮痛薬の内服、入浴などが知られている。
◇専門医を受診
食後の運動中にかゆみやじんましんなどの異変が表れたら、速やかに運動を中止して安静にし、経過を注意深く観察する。「そのまま運動を続けていると、短時間のうちに呼吸困難からショック状態に陥る可能性があります」。悪化の兆しが少しでもあれば、迷わず救急車を呼ぶ。アナフィラキシーに対しては、発症後30分以内のアドレナリン注射が有効だ。
食物依存性運動誘発アナフィラキシーと診断されたら、後日、早めに日本アレルギー学会認定のアレルギー専門医がいる医療機関を受診して原因食物を特定する。正確な診断には詳しい問診と、皮膚テストや血液検査(アレルゲンコンポーネント検査など)によってアレルギーの原因となる物質(病因アレルゲン)を同定する必要がある。
再発予防のためには「原因食物を取ったら4時間は運動を控える」「運動前には原因食物を食べない」ことを徹底する。また、万が一に備えてアドレナリン自己注射薬(エピペン)を処方してもらい携帯しておく。
こうした適切な予防策を取っていれば、運動や原因食物の摂取自体は問題ない。永田センター長は「本人も周囲の人もこの病気の特徴や対処法を理解したら、必要以上に食事や運動を制限せず生活を楽しんでほしい」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/02/24 05:00)
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