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被災した子どもの心のケア
~可能な限り「いつもと一緒」心掛けて~

「大人は、無理に『何かをしなくては』と焦る必要はない。可能な範囲でいつも通りに子どもに接し、子どもから問い掛けがあれば受け止めるといった対応をしてほしい」と話す田中医師

「大人は、無理に『何かをしなくては』と焦る必要はない。可能な範囲でいつも通りに子どもに接し、子どもから問い掛けがあれば受け止めるといった対応をしてほしい」と話す田中医師

 ◇「君のせいじゃない」と伝える

 幼児期の子は自分を中心に物事を捉える特徴があり、相手の立場で想像できない未発達の状態の「自己中心性」を持つ。そのため、いま目の前で起きていることや家族の死亡を「自分のせいだ」と考えることがある。被災地以外の子どもに災害現場の映像を見せ過ぎると、「自分の家族にも何か起こるのではないか」と不安になる場合もあるという。

 こうした子たちには、すぐに「あなたのせいじゃない」「自然に起こったことだから大丈夫。誰のせいでもない」「今、専門家が調べているよ」と正確な情報を伝えることが重要だ。「正しい理解を促すことが、つらさを調整する手助けになる」(田中医師)。

 ◇子どもの権利を奪わない

 学校など教育施設が被害を受けたり、避難所になったりしている中、被災地では新学期が迎えられない子どもたちもいる。「遊びや学びといった子どもの権利が、災害時にはおろそかになりやすい。各自治体のニーズにマッチした支援を今から考えたり準備したりする必要がある」と田中医師は語る。

 大人も子どもも気持ちをため込まず、時には共有してほしい。いつもと様子が違う子どもを目の前にすると難しいかもしれないが、大人は落ち着いた態度で「大丈夫。何かあれば聞くからね」と話し掛けよう。

 田中医師は「子どもはもともと大人に比べて前向きだ。子どもたちは意外なほど力を持っていて、その力を信じてあげることも大事。『認められている、信じてもらっている』という自信によって落ち着ける。そして、大人の皆さんも毎日を乗り越えることで精いっぱいの時期であり、自分のこともいたわってもらいたい」と言う。(柴崎裕加)

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