インタビュー

経口中絶薬、承認から1年
~広がり欠く取り扱い病院~ 産婦人科・堀本江美医師に聞く(上)

 ◇入院し、薬2種服用

 ―薬剤による人工妊娠中絶は、具体的にどのように行いますか。

 薬剤で中絶ができるのは妊娠9週0日以下です。手術は12週未満ですから、手術よりも早い段階で行う必要があります。

 2種類の薬を使います。最初は妊娠の進行・維持を止める働きのある薬(ミフェプリストン)を1錠(200ミリグラム)飲みます。

 その後、36~48時間後に二つ目の薬(ミソプロストール)4錠(800マイクログラム)を左右の奥歯の歯茎と頬の間に2錠ずつ入れて、30分間そのままにします。30分たっても、まだ錠剤が口の中に残っている場合には飲み込みます。

 この薬には、子宮口を広げ、子宮を収縮させて中身を外に押し出す働きがあります。そのため、出血とともに中身が出てくる時には、重い生理痛のような痛みを感じることがあります。子宮の中身が出たら、子宮や出血などの状態を診察して、問題がなければ帰宅します。

 薬剤も手術も日本では基本的に1泊程度の入院が必要になります。

 ◇導入機関140余にとどまる

 ―日本で薬剤による妊娠中絶を実施できる医療機関はどのくらいありますか。

 英ラインファーマ社のホームページに、「メフィーゴパック」(ミフェプリストン/ミソプロストール)が使用できる病院のリストがありますが、2024年4月末現在で140カ所余りにとどまっています(*1)。一つもない県もあり、まだ、どこに住んでいても受けられるという状況にはなっていません。導入を検討している医療機関は多いようなので、これからもっと増えていくと思います。

 ―導入する医療機関が増えないのはなぜですか。

 薬剤での中絶は、薬を処方してもらって自宅で行える国も少なくないのですが、日本の場合は入院設備のある医療機関で行うと決められています。最近は病院でも出産を行わない所が増えていて、中絶のための入院に対応できる施設が限られることが主な原因です。新しい試みを導入するのに、ある程度、時間がかかるのは仕方がないことですが、もう少し、必要とする女性が選択できる状況になってほしいと思います。(ジャーナリスト・中山あゆみ)

【注】
*1)  https://www.linepharma.co.jp/search_u.ph

堀本院長

堀本院長


堀本江美(ほりもと・えみ)
 1988年札幌医科大学卒業、94年同大大学院修了、医学博士、産婦人科医。99~2016年に同大の非常勤講師などを務める傍ら、02年に医療法人社団ブロッサム苗穂レディスクリニック院長に就任。12年から北海道女性医師の会副会長。
 北海道の児童虐待防止プロジェクトや性暴力被害者の支援にも力を注ぎ、18年度の日本女医会荻野吟子賞を受賞した。

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