治療・予防

尿酸値が高くない痛風患者
~結晶あれば治療を(両国東口クリニック 藤森新名誉院長)~

 痛風は関節などにたまった尿酸の結晶によって発作的に激痛を起こす病気だ。高尿酸血症が原因だが、尿酸値が高くない痛風もあるという。両国東口クリニック(東京都墨田区)の藤森新名誉院長に聞いた。

原因不明の激痛があれば専門医へ

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 ◇発作時に尿酸値低下

 尿酸は食物に含まれるプリン体という物質が肝臓で分解されてできる老廃物で、血液中で溶けて尿と一緒に体外に排出される。しかし、尿酸の産生が増え過ぎたり、腎臓からの排出が少なかったりして血液中の尿酸の濃度(血清尿酸値)が高くなると、溶け切らず関節などに尿酸塩結晶ができやすくなる。

 血清尿酸値が尿酸の溶解限界である1デシリットル当たり7.0ミリグラムの基準値を超えると高尿酸血症とされ、痛風予備軍となる。関節内などに沈着した尿酸塩結晶を異物と認識した白血球が排除しようとして炎症反応が起こり、腫れや激しい痛みが生じたものが痛風発作だ。

 血清尿酸値が高いほど、または高尿酸の状態が長く続くほど、痛風発作のリスクは高まる。しかし藤森名誉院長によると、発作が起こっていても検査をすると血清尿酸値が基準値を下回る場合がある。「痛風発作時には、炎症性タンパク質(IL―6)が産生されます。IL―6に腎臓からの尿酸排出を促す作用があるため、一時的に血清尿酸値が低下することが知られています」

 痛風発作の治療を受けて症状が治まると、再び尿酸値が高値に戻るケースが多い。また、明確な理由は今のところ不明だが、尿酸値の急激な低下が発作の引き金になるときがあるという。

 ◇関節超音波で確認

 さらに、「普段から尿酸値が正常でも、関節に結晶が沈着し発作が起きる例もまれにあります」。

 藤森名誉院長らが、2017年4月から22年3月までに同院を受診した痛風患者2536人の尿酸値を発作改善後に測定すると、264人は尿酸値が基準値を下回っていた。

 多くがこれまでの治療や生活習慣の改善などによって低下していたが、20人(半数が初めての発作)は同院を受診する以前に高尿酸血症を指摘された経験がなかった。20人中19人に関節超音波検査を行うと、16人で尿酸塩結晶が沈着していた。

 藤森名誉院長は「超音波検査などで結晶が確認されたら、普段の血清尿酸値が正常でも尿酸値を下げる治療が必要です。足の親指の関節などに原因不明の激痛が起こったら、専門医のいる医療機関への受診を」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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