小太りの高齢者、痩せより良好
~脳卒中からの機能回復(国立循環器病研究センター 三輪佳織医長)~
脳卒中発症後は、痩せているより、小太りの方が寝たきりになったり死亡したりするリスクが低い。国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)脳血管内科の三輪佳織医長らの研究グループは、肥満は脳卒中のリスクを高めるが、特に高齢者の軽い肥満はむしろ機能の回復を早めることを明らかにした。
脳卒中患者におけるBMI
◇肥満パラドックス
これまでの研究から、肥満度の高い人はそうでない人に比べ、生活習慣病や脳卒中などの心血管病の発症リスクが高いことが分かっている。ただ、「心血管病の発症後の機能回復については、肥満度の高い人の方が良好なことが報告されています」。こうした現象は「肥満パラドックス(逆説)」と呼ばれる。
脳卒中に関しては、「発症後の機能回復に対する肥満度の影響は、欧米の複数の研究で、体格指数(BMI)18.5未満の低体重(痩せ)の人で脳梗塞発症後の機能回復が悪いことが報告されています。しかし、脳梗塞以外の脳卒中についての研究結果は一貫していません」。
◇回復不良リスクを減少
三輪医長らは、欧米に比べて肥満が少ない日本人の解析が必要と考え、全国の脳卒中患者の診療情報を集めたデータバンクの約5万6000人分を解析。BMIについては、世界保健機関(WHO)が推奨するアジア人向けの定義を使った。
退院時の機能回復に与える入院時のBMIの影響を調べた結果、18.5未満の低体重は脳梗塞、脳出血における回復不良(悪い)のリスクを高めたことが分かった。
一方、BMI23.0以上25.0未満の「過体重」は、脳梗塞の回復不良リスクを低下させた。特に小さな脳梗塞である「ラクナ梗塞」では大幅に低下した。
しかし、動脈硬化で狭くなった血管が詰まる「アテローム血栓性脳梗塞」では、BMIが30以上の「2度肥満」がリスクを高めた。
「低体重の高齢者は、低栄養や筋量減少などによる身体機能や全身状態の低下が背景にあり、脳卒中発症後の体力消耗に十分耐えられず機能回復が悪くなると思われます。高齢者はBMI25程度を目標に体重を維持するのがよいのかもしれません」と三輪医長は話す。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2025/01/08 05:00)
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