生活の質低下、つらい便秘
大腸がんが原因の場合も
便秘は、食事量や運動量の減少による腸のぜん動運動の低下、大腸がんなど他の病気、服用している薬剤の影響などによって起こる。「10代後半から50代までは女性に多く、60代以降には男女ともに患者数が右肩上がりになります」と、東京山手(やまて)メディカルセンター(東京都新宿区)大腸肛門病センターの山名哲郎(やまな・てつお)部長は話す。
◇生活習慣の見直しを
便秘は原因によって、主に弛緩(しかん)性便秘、けいれん性便秘、直腸性便秘の三つのタイプがある。弛緩性便秘は排便回数が少ないのが特徴で、高齢者に多い。けいれん性便秘はストレスによる過敏性腸症候群の症状の一つとされる。
改善には食事量や運動量を見直して規則正しい生活を送ることが重要で、「便のもととなる食物繊維は食事だけで必要量を取ることは難しいので、サプリメントを利用するのも手です」と山名部長。
腸の動きを活発にし、ストレス解消にも役立つウオーキングや、トイレで前かがみの姿勢を取ってスムーズな排便を促すなどの工夫も効果的だ。
便秘薬は、腸内で吸収される水分量を調整する塩類下剤や、腸を刺激するセンノシドを成分とする刺激性下剤、小腸からの水分分泌を促して便を軟らかくする分泌系便秘薬を、排便頻度や便の形状などに応じて使い分ける。
塩類下剤や分泌系便秘薬は毎日使えるが、刺激性下剤は腸が刺激に慣れて効き目が悪くなり、薬の量が増えるため、必要なときにのみ使用する。市販の便秘薬や漢方薬はこのタイプの下剤で、センナ茶も成分はセンノシドなので注意が必要だ。
◇直腸が原因の便秘も
一方、直腸性便秘は便の排出障害が原因だ。加齢や出産などで直腸と膣(ちつ)の間の壁が弱くなり、いきんだときに壁が膣側に膨らむ直腸瘤(りゅう)や、いきんだときに骨盤底筋に力が入って肛門が開きにくい協調障害など、直腸自体に問題がある。
「直腸瘤は、直腸と膣の間の筋肉を引き寄せて強い壁を作る手術で改善することが多い」と山名部長。協調障害は、モニターを見ながら力の入れ具合を確認してこつをつかむバイオフィードバック療法が有効だ。
「直腸性便秘は、腸のぜん動運動や便の形状に問題はありません。食事や運動、薬物療法でも改善しない場合には、大腸肛門科で直腸指診や排便造影検査などを受けましょう。大腸がんの早期発見のためにも、50歳以降は便潜血検査を年1回、2~3年に1回は内視鏡検査を受けてください」と山名部長は説明する。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2018/03/07 08:00)