治療・予防

軽視は禁物、早産リスクも
妊娠性歯肉炎に注意

 妊娠すると口内の環境が変わり、虫歯や歯周病にかかりやすくなる。この「妊娠性歯肉炎」は口の中だけの疾患と思いがちだが、天野歯科医院(東京都千代田区)の天野聖志(あまの・きよし)院長は「早産を起こす恐れがあるので軽視は禁物」と注意を促す。

 ◇歯茎の腫れや出血

 妊娠性歯肉炎は、妊娠5~20週目くらいから歯茎が赤く腫れたようになり、出血することもある。症状が強まるのは妊娠32週目ごろで、口臭や口内炎の他、虫歯にもなりやすくなるという。

 「食事をすると口の中は酸性に傾きますが、唾液が中和して歯周病や虫歯を防いでいます。妊娠すると女性ホルモンの変化で唾液の分泌量が減り、自浄作用が低下するため歯肉炎になりやすくなります」と天野院長は説明する。間食が多い、だらだらと長時間にわたって食事をする、水分をあまり取らないなどの生活習慣がある人は要注意だ。

 さらに、妊娠中はエストロゲンという女性ホルモンの分泌が盛んになり、エストロゲンを好む「プレボテラ・インターメディア」という歯周病を起こす細菌が口内に増えることも一因だ。つわりで歯磨きがしづらいと、悪循環を招きやすい。

 特に注意したいのは「ポルフィロモナス・ジンジバリス」という歯周病菌。歯茎の血管から体内に入ると、早産を招く恐れがある。「子宮内に達すると免疫細胞が過剰に反応し、子宮を収縮させるホルモンが急激に増えるからです」と天野院長。

 ◇丁寧な歯磨きと検診

 妊娠初期はつわりの症状で、歯科医院でも積極的に治療が行えないため、歯磨きの指導を受け、自宅でできるかぎり丁寧に磨くことが重要。天野院長は「食後でなくても、一日の中で体調が良いときに丁寧に磨く習慣を身に付けてください」とアドバイスする。

 歯磨きは、ヘッドの小さい歯ブラシを舌に当たらないよう小刻みに動かす。味や匂いの強い歯磨き粉を避け、デンタルフロスも併用すると効果的だ。それでも歯周病に移行してしまうこともあるので、つわりが治まり、安定期に入ったら、歯科医院で歯石や汚れを除去するとよい。

 天野院長は「出産後は子どもにかかりきりになり、なかなか自分のケアができなくなります。歯周病菌は子どもにもうつる恐れがあるので、定期的な歯科検診を心掛け、口内の環境を良い状態に保ってください」と強調している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


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