「死に至る可能性も」と警鐘
便秘大国日本の実態
近年は新薬が相次いで登場している。2012年、新しい薬理作用に基づく新薬が32年ぶりに出た。腸液の分泌を上げ、便の水分量を増やして柔軟化し、排便を促す。臨床試験が行われており、推奨度も高いが、妊婦に使用できないほか、若い女性の場合は吐き気を催すという副作用がある。また、医師の処方が必要なため、慢性便秘症として定期的に医師の診療を受けなければ使用できない。
こうした新薬が登場し、治療の選択肢も増えているが、治療現場の実情はどうなっているか。
患者が医療機関を訪れた場合でさえ、「便秘は秘め事で本当のことを言わない人が多く、指をお尻に入れて便を出しているといったことは、なかなか話してくれない」。このため、有効な治療法がみつからないケースがあるのだという。
◇「診たて力」にも課題
初めて診療を受けて薬を処方された患者のうち、何割が治療を継続するか。その割合は3割だという。患者の便は、ウサギのふんのような「コロコロ便」と「硬い便」が計50%占める。また過剰作用による下痢便も23%に上るが、「改善しないため、7割が治療を中断してしまう」
便の形状は「コロコロ便」から、水のような「液体状の便」まで7分類されるが、日本人の理想はバナナのような硬さと形の「バナナ状の便」。これを目標にして、まずは酸化マグネシウムなどを処方し、下痢が起きれば量を減らし、効かなければ刺激性下剤を加えるなどして調整する必要があるのだが、現状は理想とはほど遠い。
◇「迅速」かつ「完全」
また、バナナ状の便が出ればよいというわけではない。
「迅速」かつ「完全」な排便により、患者が満満足を得られるかどうかが、より重要な指標になる。「迅速」な排便とはどれくらいのスピードか。排便時間は95%の人が50秒以内といい、これよりも遅いと迅速とは言えない。「コロコロ便」や「硬い便」は、いきまないと排便できないことなどから、長い時間かかってしまう。
◇早い段階で医療を
「便秘診療の基本」は何か。中島教授は、便の形状がバナナ状になるように調整し、「迅速」「完全」な排便で患者が満足を得られるようにすることだ、と強調した。
それでは、治療により薬の服用なしで日常生活を送れる状態に回復する割合はどれくらいか。中島教授は「1~2割程度」だという。便秘になると患者は普通、薬局に行く。1~2年後に慢性化してから医療機関を訪れるのだが、「(相当に悪化しているため)8~9割は薬により(長期にわたって)便秘をコントロールすることになる」
「早い段階で医療機関で診察を受ければ状況は変わるのだが…」。中島教授は便秘を病と認識して医療機関を訪れてほしい、と訴える。(時事通信社・舟橋良治)
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(2018/09/14 14:57)