ヘルスコミュニケーションDr.純子のメディカルサロン

AIにカウンセリングは可能か
精神療法にも変化の波 大野裕・認知行動療法研修開発センター理事長

 チョコレートを運ぶ分身ロボット。こうした光景、日常生活で頻繁に目にする日も近い?
 AI(人工知能)を使った医療が注目を浴びています。AIによる画像診断や病気診断へのAI導入は効果的であろうと想像がつきますが、精神療法やカウンセリングといった領域には、AIは立ち入れないという印象があります。気分が落ち込んだとき、AIを導入したスマートフォンに向き合っている姿や、ロボットにカウンセリングを受けている自分は想像がつかないのではないでしょうか。

 ですから、精神科医で「認知行動療法」の第一人者、大野裕先生の「必ずしもそうではない」というご意見を聞いて驚いたことがあります。「上手にIT機器を使えば、人間だけの場合より効果的に精神療法を行える可能性がある」と語る大野先生にお話を伺いました。

 ◇カウンセリングの最終目的とは

 海原 AIをうまく使えば、より効果的にカウンセリングを行えるというのは不思議な気もしますが。

 大野 ご指摘のように、AIをうまく使えば効果的なカウンセリングができると考えています。そのようにお話しすると、驚かれる方が少なくありません。AIなどのテクノロジーはカウンセリングなどの人間的な関わりと対局のように考えている方が多いからです。もちろん、私もAIだけで効果的なカウンセリングができるとは考えていません。

 カウンセリングというと、一般の人たちは、専門家がアドバイスをして問題から解放する手段だと考えていることがよくあります。そのように寄り添いながら的確にアドバイスをしないといけないとすると、AIが越えるハードルはとても高くなるでしょう。

 しかし、カウンセリングの最終的な目的は、一方的に解決策や考え方を教えることではありません。悩んで相談に来た人が自分で自分の相談に乗れるように、つまり自分が自分の相談者になれる力を育てることです。そうなるためには悩んでいる人が自分で問題に向き合って解決してくことが何よりも大事になります。それができれば、悩んでいる人は、目の前の問題に対処できるようになるだけでなく、問題に対処する力を伸ばし、先に進んでいく自信を持てるようになります。

 このように、悩んでいる人が自分の力で問題に対処できるように手助けするというのであれば、AIにもできると考えています。特に、気持ちを整理して考えを切り替えたり、いろいろな工夫をして行動したりすることで、気持ちを元気にするような認知行動療法の定型的なスキルの練習は、コンピューターが得意とする分野です。AIのそうした特長を生かしながら、悩んでいる人を手助けできるようになる可能性は高い、と考えています。

 海原 先生はスマホ用に認知行動療法のトレーンングサイトを提供していますね。孤独で引きこもりがちな方は、人と関わるより、IT機器の方が親しみやすいということがあり、画期的だと思っていました。精神科にかかることに心理的な壁があり、受診をためらっている方や、今はそれほど症状があるわけではないが、このままだと心配だという方には、予防という観点で、こうしたサイトは救いだと思います。

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