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早期治療でがん9割治る
「教育」の遅れで死亡者増

 1981年から日本人の死因の第1位を占めるがんは、健康面での大きな課題だ。しかし、東京大学医学部付属病院放射線科准教授で厚生労働省や文部科学省のがん関係の委員会に所属する中川恵一氏は「早期発見・治療でがんの9割は治る。がんに対する正しい教育を怠ってきたのが、大きな問題だ」と批判する。その中川准教授と、がんと闘い続けながら働く意欲を失わない「がんサバイバー」たちによる啓発セミナーが11月、東大病院で開かれた。

中川恵一・東京大学医学部付属病院放射線科准教授


 ◇先進国で唯一増加

 日本では年間、約38万人ががんで死亡している。がんによる死亡者は先進国といわれる国々の中で唯一、増加。例えば、大腸がんを日米両国で比べると、日本は5万人強、米国が5万人弱だ。人口は米国が日本の約2・6倍だから、日本の大腸がん患者が多いことが分かるが、早期発見されてないことも一因とみられる。

 中川准教授は、日本での「ヘルスリテラシー」の未熟さを危惧する。その一つが「がん教育」。ようやく2017年から全国の小・中・高校でがん教育が始まったが、成人に関してはお寒い状況にある。実際に「がんが見つかると怖い。だから、検診を受けない」という企業の従業員もいる。中川准教授は「主戦場は職域だ」と話し、各地を回ってがん教育の重要性を訴えている。

 ◇知識の差で運命左右

 中川准教授は「がんはわずかな知識の差がその後の人生を左右し、運命が変わる病気だ」と言う。「再発転移すると、完治は難しい。敗者復活戦のない一発勝負だ。日本人はそのことを習わないのが大きな問題だ。私も、中学や高校の時にはほとんど習わなかった」と苦笑いする。

 国立がん研究センターがん情報サービスによると、12年のがんの罹患(りかん)率は男性が63%、女性は47%だった。「男は3人に2人、女性は2人に1人ががんになるということだ」。男性のがんは多い順に胃、大腸、肺が上位3位で、女性は乳房、大腸、胃と続く。

 ◇基本的な検診でOK

中川准教授とがん体験者たち

 がんと診断されると、ショックを受ける人は多い。がんの種類にもよるだろうが、がんと宣告されて1年以内に自殺する人の割合は、がんでない人の約20倍になるとされる。中川准教授にもつらい経験がある。20年前、がんであることを告知した患者が病室で自殺したのだ。それでも、「患者の心情に配慮した上で、伝えることが大事だ」と言う。

 大きな理由の一つは「がん全体の3分の2は治る。早期に発見し、早期に治療すれば、95%が完治する」からだ。がんの早期発見のためには、定期的にがん検診を受けることが重要だ。「検診はベーシックな方がよい」と中川准教授は指摘する。国が推奨している検診は、胃がんは胃バリウム検査、大腸がんは潜血反応を調べる検便、肺がんは胸部レントゲン、乳がんは視触診とマンモグラフィー、子宮頸(けい)がんは細胞診となっている。対象年齢は子宮頸がんが20歳以上、それ以外の四つのがんは40歳以上だ。

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