治療・予防

手術翌日から歩行可能
外反母趾、骨のねじれ矯正

 足の親指の付け根が外側に「く」の字のように張り出して、親指の先端が隣の人さし指の方向に曲がってしまう外反母趾(ぼし)。テーピングやマッサージなどさまざまな矯正法があるが、変形が進んだ足を元に戻すには手術するしかない。年間150~200件の外反母趾手術を行う「足のクリニック表参道」(東京都港区)の桑原靖院長に話を聞いた。

進行した外反母趾には手術が有効(足のクリニック表参道提供)

進行した外反母趾には手術が有効(足のクリニック表参道提供)

 ▽放置で大きく変形

 外反母趾は、足の骨格の構造がゆがむことで発症する。治療しなければ悪化していく進行性の疾患だ。最初は激しく痛むが、変形が進んで親指の付け根の関節が完全に脱臼してしまうと、ほとんど痛みを感じなくなる。

 軽症の段階であれば、足に合った靴とインソール(足底装具)を着用して足の構造を補正することで痛みを抑え、変形を食い止められる。ただ、変形の度合いが大きくなって靴が履けなくなったり、歩行が困難になったりしたら手術が必要だ。

 桑原院長は「手術では親指の付け根から足の甲に走る中足骨(ちゅうそくこつ)を切り、骨の位置とねじれを元に戻します。足全体のバランスを考え、骨の長さや切断面の角度を微調整し、適切につなぐことがポイントです。それができれば、術後の痛みやトラブルを抑えられます」とする。

 同クリニックでは、骨をつなぐ際、針金やチタン製のねじではなく、人工骨と同じ素材のねじを使う。柔軟性があって、術後の痛みも出にくいという。時間がたつと体内に吸収されるため、ねじを取り除く必要がなく、手術が1回で済む。

 ▽手術後もインソールを

 患者にとって手術は歩行に直接影響する。入院期間や退院後の生活への不安もあり、手術をためらう人は少なくない。

 しかし、「私が執刀した患者さんのほとんどが手術翌日に歩く練習を始め、翌々日に退院します。親指を地面に着けずに歩くため多少不便ですが、松葉づえも車椅子も必要ありません。両足を同時に手術した80歳代の患者さんも手術2日後に歩いて退院しました」と桑原院長は強調。退院直後から普通の生活を送ることができるという。

 骨は3カ月程度で完全につながり、それ以降は運動をしても問題ない。ただし、足の構造自体が改善されたわけではないため、桑原院長は「足の健康を守るため、足に合ったインソールを使うのが望ましいでしょう」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


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