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スギ花粉症、8割の人に効く舌下免疫療法
常温保存できる錠剤で治療も楽に 大久保公裕・日本医科大学耳鼻咽喉科教授

 花粉症の季節がやってきますが、花粉症は治らないと思って諦めている方が多いですね。毎年、化粧ができないと嘆いている方、作業能率が低下すると悩んでいる方は非常に多いです。そんな方に「スギ花粉症なら、8割の人に効果がある治療法」の話です。舌下免疫療法の開発を手掛けてきた日本医科大学の大久保公裕教授に伺いました。

スギの花。日本のスギ花粉症は世界3大花粉症の一つで、中でも症状が一番重いとされる


 ◇20年がかりの研究成果

 海原 花粉症の治療というと内服薬と点鼻薬、それに吸入などが中心に行われていますが、そもそも、どういうきっかけで舌下免疫療法を開発なさったのでしょうか。

 大久保 1990年代に私たちと親しい研究仲間の一人、英国の耳鼻科の女性医師が中心になり、この療法を欧州のアレルギー学会などで発表していました。私の前々任者だった奥田稔教授(現名誉教授)がこれに興味を持ち、やってみようということになりました。

 厚生労働省の研究費を取ろうとしましたが、当初、却下されました。関心を持ってもらえず、まだトレンドではなかったんですね。

 ただ、その後、欧州で注目を集めるようになり、日本でもやっと厚労省が研究班をつくるようになり、開発を進めてきたのです。

 舌下免疫療法は臨床試験から始め、2005年にその論文を書いて、14年に保険適応で治療が開始になりました。手掛けてから20年ほどかかったんです。

 海原 なるほど。最初が英国ということは、英国には花粉症が多いのですか。

 大久保 英国はイネ科の花粉症が多いのです。もともと牧草地が多いですから。世界の3大花粉症というのは、英国のイネ科の花粉症、米国のブタクサ花粉症、そして日本のスギ花粉症です。その中で日本の花粉症は一番症状が重いということは世界中のコンセンサスです。

 ◇治療期間が長いほど効果も高く

 海原 これまでの根治療法は、皮下注射によるアレルゲン免疫療法などで、面倒でした。先生が開発を手掛けた免疫療法は、従来の治療法とは、どのように異なるのでしょうか。

 大久保 免疫療法というのは、アレルギーの原因となるアレルゲンを少量から投与して、徐々にその量を増やし、過剰反応を低下させるというものです。

 当初は、花粉抽出液を皮下注射する方法でした。しかし、長期に定期的に通院し、注射を受けなければなりません。また、注射部位にかゆみが出たりして、負担が大きい。そこで、舌下免疫療法が開発され、14年から保険適応で治療を開始しました。

スギ花粉症治療用に1日1回、1錠を服用する舌下薬「シダキュア錠剤」

 秋から治療を開始して、翌シーズンの花粉症の時期に症状が改善した人は8割です。これまで、すでに9万人が治療を受けました。

 治療期間が長くなるほど、症状の改善効果も高まります。舌下に置く花粉の抽出物も、最初は冷蔵庫で保存が必要な液体でしたが、現在は室温保存が可能な錠剤になり、自宅での治療がしやすくなりました。


 海原 それは朗報ですね。8割の方の症状が改善し、しかも治療が楽になったのは素晴らしいです。治療が向かない方などはありますか。お子さんでも大丈夫でしょうか。


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