一流に学ぶ 心臓カテーテルのトップランナー―三角和雄氏

(最終回)
不思議なほど折れない心
ブランド物に興味なし

 ◇病院全体の底上げ目指す

 「テレビに出るときのスーツは、見ていただくと分かりますが、いつも同じです。夏冬1着ずつしか持っていません」

 子どもたちにも、ほとんどおもちゃは買い与えないという。「どうせ飽きるし、捨てるだけだから。年1回、誕生日に好きなものを買ってあげるだけで、うちの娘たちは、おもちゃは自分で作る。トイレットペーパーでブレスレットや腕時計を、ゆで卵の殻で双眼鏡を作っていました。友達がディズニープリンセスのドレスを買ってもらったのを見て、色物のタオルを洗濯ばさみでくっつけて、自分でドレスを作ってました」

 好物はセブンイレブンのおでん。「あれ最高。本当ですよ」。

 単なるケチというわけではない。公益のために一定程度の私財を寄付した人に与えられる紺綬褒章を、2回も授与されている。

 「日本赤十字社に血液運搬車を寄付したり、歳末助け合いで寄付したり。日赤から血液をもらっているので個人的にやっています。米国人はよく寄付するし、昔、お相撲の大鵬さんがやっているのを聞いて、いいことだなと思って始めました。いくら寄付したかなんて覚えてない。お金はないと困るけど、ありすぎても争いのもとになる。持って死ねるわけじゃないしね」

 2017年8月下旬の午前1時。やや不似合な婦人物のトートバッグを下げて、三角氏が病院を後にする。「紙袋に入れてたら、破けちゃって、看護師さんがくれたんですよ」と笑う。

 今後取り組みたいことについて、三角氏は「循環器以外の分野でも医師に力をつけさせて、病院全体としての層を厚くしていきたい」と話す。嫌々引き受けた院長職にも「僕は負けず嫌いだから」。全力投球の毎日はまだしばらく続きそうだ。(ジャーナリスト・中山あゆみ)

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