「医」の最前線 緩和ケアが延ばす命

世界的には心不全が第1位―緩和ケア〔9〕
治療と並行で大きなメリット

心不全とそのリスクの進展ステージ=急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)より

心不全とそのリスクの進展ステージ=急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)より

 ◇がん・心不全の他にも

 さらには、次回の2020年度の診療報酬改定において、これまでは入院での緩和ケアチームの関わりのみに生じていた診療報酬が、心不全においても外来緩和ケア管理料が取れるようになる(現状はがん患者で医療用麻薬を使っている人のみ)という改定が予測されています。

 循環器内科医を主な対象とした心不全緩和ケアトレーニングコース(HEPT)、緩和ケア医を対象とした心不全の研修などが行われるようになっており、ますます心不全の緩和ケアは普及してゆくでしょう。

 心不全の患者さんにおいては、まだ緩和ケアという言葉が病気と結びついていないことも多いでしょう。まずは心臓の病気でも緩和ケアを受けられるということを知っていただくことだと思います。

 他にも肺疾患、腎不全、神経疾患、認知症などでも、症状緩和と生活の質向上を目指すアプローチは必要と考えられ、がんと心不全以外でも緩和ケアが普及してもらいたいものです。

緩和ケアの論文でもうつへの効果はよく調べられています。それだけよく見かけるのです

緩和ケアの論文でもうつへの効果はよく調べられています。それだけよく見かけるのです

〔2〕早期からの緩和ケア

 海外では次々と早期緩和ケアの効果を示す論文が出て来ています。七つの研究を統合して調べた<Early Palliative Care for Improving Quality of Life and Survival in Patients with Advanced Cancer: A Systematic Review and Meta-analysis  Zanghelini et al., J Palliat Care Med 2018, 8:5>によると、早期から緩和ケアを併用した群において、生活の質が統計学的に意味のある程度で改善し、症状も軽く、抑うつの改善傾向と29%の死亡リスク減少が示されました。

 最近出た論文でも、進行肺がんの男性を中心とした研究で、診断後31~365日に受けた緩和ケアが生存率の増加に関係したという結果が出ています。診断後365日以上経過して緩和ケアを受けた群ではそれが認められませんでした。


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