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生理痛に悩む女性へ
~痛みの原因と改善方法~ 【第2回】

 生理痛は多くの女性が経験するつらい症状の一つです。なぜ起こるのか、どのように痛みを和らげることができるのか、今回はその秘密に迫ります。生理痛に悩む女性は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

生活環境が大きく変わる4~5月には、月経不順などの症状が悪化する人も多い(イメージ画像)

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 ◇日ごろの生活ぶりも影響

 生理痛は体内で起こる複数の生理的プロセスで生じるほか、日常生活の中に原因があることも少なくありません。ストレスの多い生活や不規則な睡眠サイクル、運動不足、食生活の乱れなどが一因となっている可能性があります。主な原因を解説していきます。

 ①子宮収縮物質の過剰分泌

 生理痛の主な原因は「プロスタグランジン」の過剰分泌です。プロスタグランジンは子宮収縮を促す物質で、月経開始時に子宮内膜を剝がし、経血として排出する役割を担っています。

 一方で、分泌量が多過ぎると子宮が過剰に収縮し、痛みを感じやすくなります。分泌量は個人差や年齢、ストレス、生活習慣などによって影響を受けると言われており、特に10〜20代の女性は分泌量が多く、生理痛が強くなる傾向にあります。

 ②体の冷え

 体、特に下腹部の冷えは血行を悪化させ、生理痛を増加させることがあります。冷えによる血行不良は筋肉の緊張を高め、痛みを引き起こします。

 ③精神的・身体的ストレス

 痛みとストレスの関係には深いつながりがあります。精神的ストレスは心配、不安、恐れ、悲しみなどの否定的な感情から、身体的ストレスは過剰な運動、睡眠不足、栄養の偏りなどから生じます。

 こうしたストレスは自律神経に影響を与えます。自律神経がうまく機能しなくなると、ホルモンバランスが乱れ、体温調節がうまくいかなくなったり、免疫力が低下したりするのです。体温調節がうまくいかなくなると、体が冷えやすくなって血行不良を引き起こし、老廃物の排出が滞ります。老廃物がたまると、炎症が起こり、痛みが増幅する可能性があります。リラックスして自律神経を整えることが大切です。

 ◇四つのセルフケア

 適切なセルフケアを心掛けることで、生理痛のつらい痛みが和らぐ可能性があります。ここでは、具体的な方法を四つ紹介します。効果の感じ方に個人差はあるものの、つらい症状に困っている方は、ぜひセルフケアを取り入れ、生理痛との上手な付き合い方を見つけていきましょう。

 ①下腹部を温める

 生理痛の原因となるプロスタグランジンは、体温が下がると活発に分泌されます。そのため、下腹部を温めれば痛みを和らげることが可能です。仕事中は膝掛けやカイロ、腹巻きを使い、なるべく下腹部を冷やさないようにしましょう。使い捨てカイロは、下腹部だけでなく腰や背中、足の指など、痛みを感じやすい場所に貼るのも効果的です。

 ②ストレッチ

 ストレッチは血行を促進し、筋肉の緊張をほぐす効果があります。血行が良くなると、酸素や栄養素が体の隅々にまで行き渡り、痛み物質の排出が促進されるのです。また、ストレッチはリラックス効果も期待できます。ストレスは痛みを悪化させる原因となるため、リラックスできるストレッチを取り入れ、痛みを和らげます。

 ③入浴

 全身浴は血行を促進し、筋肉の緊張をほぐすのに効果的です。温かいお湯につかればリラックス効果も期待できます。半身浴は下腹部を温め、生理痛を和らげる効果があります。入浴時間は15〜20分程度が目安で、温度は38〜40度程度がお勧めです。

 ④睡眠

 ホルモンバランスの変化で、生理前や生理中は非常に眠くなる場合があります。睡眠不足はホルモンバランスを乱し、痛みを悪化させます。生理中は特に、質の高い睡眠を心掛けましょう。

痛みが強い場合は無理せず受診したい(イメージ画像)

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 ◇産婦人科で受診も

 生理痛がセルフケアでも改善されない場合や、通常と異なる強い痛みを感じる場合は、産婦人科の専門医に相談することも重要です。痛みが非常に強い場合、子宮内膜症子宮筋腫など、他の疾患が隠れている可能性があります。

 生理痛は多くの女性にとって避けられませんが、適切なセルフケアや必要に応じた専門医のアドバイスで軽減できます。苦痛への対処は、優しく自分の体に寄り添うことから始まります。セルフケアを上手に活用し、痛みとうまく付き合っていきましょう。(了)

沢岻美奈子(たくし・みなこ)
 琉球大学医学部を卒業後、産婦人科医として25年以上の経歴を持つ。2013年1月、神戸市に女性スタッフだけで乳がん検診を行う沢岻美奈子女性医療クリニックを開院。院長として、乳がんにとどまらず、女性特有の病気の早期発見のための検診を数多く手掛ける。女性のヘルスリテラシー向上に向け、診察室での患者とのやりとりや女性医療の正しい知識をインスタグラムで毎週配信している。
 日本産科婦人科学会専門医、女性医学学会認定医、マンモグラフィー読影認定医、乳腺超音波認定医、オーソモレキュラー認定医。漢方茶マイスター。

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