こちら診察室 学校に行けない子どもたち~日本初の不登校専門クリニックから見た最前線

不登校の子どもを孤立させない
~教育・福祉・地域でつながる支援リソース~ 【第10回(最終回)】

 3. オンライン学習支援

 ICT(情報通信技術)を活用した支援として、教室での授業をリアルタイムで別室や自宅に配信するシステムを導入している学校も増えてきています。これにより、教室に入れない状況でも学習を継続することが可能となり、学習の遅れに対する不安を軽減することができます。

教室での授業をリアルタイムで別室や自宅に配信するシステムを導入する学校も増えている

教室での授業をリアルタイムで別室や自宅に配信するシステムを導入する学校も増えている

 ◇ 初期対応段階(不登校が始まって間もない時期)

 この段階では、不登校の状態が明確になり始め、より具体的な支援が必要となります。早期の適切な対応は、状況の改善に大きな影響を与える可能性があります。

 (主な状況)

 継続的な欠席が始まり、学校に行けない不安や苦痛が明確になってきます。また、昼夜逆転など生活リズムの乱れが出始めることも特徴的です。この時期は、本人も家族も強い不安を感じやすく、適切な専門家のサポートが重要となります。

 (推奨される支援サービス)

 1. 教育センターによる相談事業

 教育センターは、各地域の教育委員会が設置する公的な専門機関です。専門性の高い教員や心理の専門家による詳しいアセスメントを行い、その子どもに合った具体的な支援方針を検討します。無料で利用でき、継続的な相談や支援、心理カウンセリングや軽微な活動の提供なども可能です。

 保護者の方の不安や悩みにも丁寧に対応し、具体的な対応方法についてアドバイスを提供します。一般的な認知度は高くありませんが、積極的な利用が推奨される施設です。

 2. スクールソーシャルワーカー

 スクールソーシャルワーカーは、福祉の専門家として、子どもを取り巻く環境全体に働き掛ける専門職です。家庭環境や学校環境の調整を行い、必要に応じて福祉サービスの利用を提案するなど、包括的な支援を行います。

 特に、経済的な問題や家族関係の課題がある場合には、早期からの関わりが効果的です。

 3. 通級による指導

 通級による指導は、普段は通常の学級に在籍しながら特別な指導を受けられる制度です。専門性の高い教員が個別指導(本人の望む活動や遊びも含む)を通じて学習支援を行うとともに、集団生活への適応力を段階的に育てていきます。学校との関係を維持しながら、必要な支援を受けられる方法として有効です。

 比較的容易に利用することができ、通級指導を楽しみに通う不登校傾向の子どもも多く存在します。

 ◇ 中期支援段階(不登校が継続している時期)

 不登校が継続すると、新たな課題が出てくるとともに、支援ニーズも変化してきます。この段階では、より包括的で長期的な視点に立った支援が必要となります。

 (主な状況)

 欠席が長期化し、心理的な課題がより明確になってきます。特に、学習の遅れへの不安が大きくなり、将来への漠然とした不安を感じ始める時期でもあります。また、生活リズムの乱れが定着したり、家族関係にもさまざまな影響が出てきたりすることがあります。

 (推奨される支援サービス)

 1. 教育支援センター(適応指導教室)

 教育支援センターは、公的機関が運営する学校外の学習支援施設です。一般的に「適応指導教室」とも呼ばれ、不登校の子どもたちの重要な居場所となっています。公的な準フリースクールといった立ち位置であり、学校への出席扱いとして認められます。

 また、在籍校との連携を重視しており、定期的に学習の進度や子どもの様子について情報を共有し、学習内容の調整を行います。これにより、将来的な学校復帰を視野に入れながらも、現在の子どもの状況に合わせた柔軟な支援が可能となります。

 教育支援センターでは、学習だけでなくさまざまな体験活動や創作活動も重要な支援の一つとなっています。絵画や音楽、陶芸などの創作活動、季節の行事やスポーツ活動など、多様な活動を通じて自己表現の機会を提供します。これらの活動は、子どもたちの興味関心を広げるとともに、達成感や自己肯定感を育む機会となります。

 施設には、専門性を持った教員など経験豊富なスタッフが配置されています。彼らは日々の活動の中で子どもたちを見守りながら、必要に応じて個別の心理的サポートも提供します。

 2. 放課後等デイサービス

 放課後等デイサービスは福祉サービスの一つで、生活能力の向上のための訓練や居場所を提供します。「放課後」という名称が付いていますが、運用は比較的柔軟であり、事業所により日中の時間帯でも利用が可能な場合が多くあります。

 学童保育と違い、専門的な支援者が社会性を育むためのグループ活動や、生活習慣の形成支援、コミュニケーション能力の向上を目指した活動、創作活動や運動プログラムなど、さまざまな支援を提供しています。名前が放課後となっていることにとらわれず、積極的な利用を検討することができます。

 3. 子ども家庭支援センター

 こども家庭支援センターは、子どもと家庭に関する総合的な相談窓口です。家族全体を視野に入れた支援を行い、必要に応じて家庭訪問なども実施します。特に、きょうだいがいる場合など、家族全体への影響を考慮した支援が必要な際に有効です。


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