こちら診察室 知ってる?総合診療科

第7回 漢方医学の活用は「世界の潮流」
日本が誇る実用的な治療 ~総合診療医の出番です~

 ◇システム全体を治す

 このような事例に多く遭遇する総合診療科でこそ、漢方医学の見方を十分に活用できるでしょう。 

 実際の診療例を挙げて考えてみましょう。 

百味箪笥(ひゃくみだんす)。薬を入れておく小引き出しがたくさんある

 患者は80代の女性で、主な症状は息切れです。よく問診すると4年前から息切れをしやすくなり、健康診断では脈拍が早くなる「頻脈」が指摘されています。食欲はありますが、(1)足がつりやすく冷える(2)足裏がしびれる(3)皮膚がかゆい-などの問題があり、就寝中に2回もトイレに通う頻尿もありました。 

 漢方の診断学に基づいて診察していくと、下腹部がふにゃふにゃしている「小腹不仁」という所見が得られました。このような状態を漢方では、現代解剖学の腎臓とは異なる意味の「腎」という臓器が弱る「腎虚」という病態と判断します。 

 そこで「腎」の機能を補う「八味地黄丸」という漢方薬を処方したところ、2週間で足のつりや息切れが消失。その後に冷えやしびれなど他の症状も改善しました。いわば「腎」というシステムの衰えがさまざまな症状を引き起こしており、システム全体の衰えを治せば症状は消えたり改善できたりするという理論です。 

 ◇日本ならではの統合医療 

 この患者を西洋医学的な視点で考えると、息切れは循環器科、足のつりやしびれは整形外科、夜間頻尿は泌尿器科、皮膚のかゆみは皮膚科、冷え症は内科というように、症状が出た臓器や部位ごとに複数の診療科を受診し、検査や投薬が行われることになります。 

 患者側も負担ですし、症状はよくならなかったり、薬の副作用が出たりということにもなりかねません。このような例から、必要に応じ漢方医学の見方をうまく取り入れると上手に治療できるようになると考えます。 

及川哲朗氏

 漢方医学は日本が誇る伝統医学であり、実用的な治療学です。また、伝統医学を現代の医療システムに組み入れることは「世界の潮流」になりつつあります。

 総合診療科が中心となって現代医学と漢方医学の統合・利活用を進めることは、日本ならではの統合医療の形として国民の健康と幸福に大きく寄与するものと考えます。(東京医科大学病院総合診療科/漢方医学センター・及川哲郎)

及川哲郎氏(おいかわ・てつろう)
1986年3月浜松医科大学医学部卒。北里大学東洋医学総合研究所臨床研究部部長、同研究所副所長などを経て、2019年4月東京医科大学総合診療医学分野准教授。同7月東京医科大学病院漢方医学センター長。総合内科専門医。産業医。漢方専門医・指導医

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