こちら診察室 よくわかる乳がん最新事情

第1回 女性の11人に1人が乳がんに
病気の特徴、治療選択の流れを知る 東京慈恵会医科大の現場から

 乳がんの治療は、幾つもの種類の治療方法を組み合わせて全身を対象に行っていきます。これを「集学的治療」と呼びます。科学的に効果が実証・証明された治療方法が標準的治療として認められ、専門学会がまとめる各種の診療ガイドラインで推奨されるようになります。

 この中で、公的医療保険の適用(保険診療)が認められた治療方法が、一般に広く実施可能な選択肢となります。連載初回の今回は、乳がんの特徴などについて説明し、治療選択の流れを総論的に紹介します。

 ◇米国では8人に1人、日本でも増加傾向

 乳がんとは、乳房の乳腺組織に発生する悪性腫瘍で、標準的治療の確立が進んだ現在、がんの中では生存率が比較的高い病気です。半面、進行すると全身転移を起こすことが多く、診断治療後、長期間経過した後で再発することもあります。

 米国では一生の間に乳がんになる女性は約8人に1人で、年間約27万人が発症し、すべてのがんの約30%を占めるといわれています。死亡数も全がんの約15%と報告されています。

 日本では以前、乳がんの罹患(りかん)率は欧米をはるかに下回っていましたが、近年は増加傾向。女性では主要な5大がんの中で圧倒的に多く、おおよそ生涯を通して11人に1人が発症する可能性があると試算されています。

 死亡数としても、部位別で大腸、肺、膵臓(すいぞう)、胃に次いで5番目ではあるものの、年間で約1万4000人を超え、増加の一途をたどっています。

 ◇リスク要因はさまざま、遺伝性乳がんも

 乳がんの発症リスクを高める要因(危険因子)はさまざまです。良性の乳腺疾患にかかったという「既往歴」もその一つ。血縁のある近親者にがん患者がいる「家族歴」のある人も、遺伝性乳がんのリスクが疑われることがあります。

 がん増殖に女性ホルモンが影響するタイプの乳がんもあるので、高齢で初産か出産経験のない人、初経が早かったり閉経が遅かったりした人もリスクが高いと言えます。

 食生活や生活習慣もリスクを左右します。肥満は閉経後の女性だとリスクを高めるのは確実で、最近は閉経前でもリスクを高める可能性があると注目されています。

 乳がんの進行度や悪性度は従来、他のがんと同様に、「TNM分類」という方法で表されてきました。腫瘍の大きさやリンパ節への転移、他臓器への転移といった状態に基づいて、0~Ⅳの病期(ステージ)に分類されます。

 近年はさらに、摘出組織を用いた病理組織学的検査で乳がんの性格(生物学的特性)を規定し、診断や治療に利用するようになりました。

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