こちら診察室 よくわかる乳がん最新事情

第2回 乳がんの早期発見、マンモグラフィーを柱に
検診、検査から診断が確定するまで 東京慈恵会医科大の現場から

 ◇精密検査にMRI、最後の結論決める病理診断

 乳がんの疑いが指摘され、精密検査が必要になった場合、用いられる検査法の一つが磁気共鳴画像装置(MRI)を使った検査です。

 画像上で異常のある部分のコントラストをはっきりさせるため、検査を受ける人に、造影剤と呼ばれる薬剤を点滴してからMRIで撮影します。小さながんを見つけ出すのに優れ、すでに乳がんと診断された患者の病変の広がりを確認するのにも非常に有用です。

 その他の画像検査としては、乳がんがどこまで進行しているか、他の臓器に転移していないかを調べるため、「骨シンチグラフィー」と呼ばれる核医学検査や、陽電子放射断層撮影(PET)とコンピューター断層撮影(CT)を一体化した「PET―CT」による検査を実施することがあります。

 最後の結論を決めるのが病理診断です。視触診や各種画像検査で乳がんが疑われる所見があると、疑われる部位の体組織の一部を取り出し、顕微鏡で調べることで、がんかどうか判断します。

 病理診断で一般的なのは「細胞診」です。採血に使う程度の太さの針で刺し、組織の細胞を吸い取る「穿刺(せんし)吸引細胞診」や、乳頭からの分泌物をぬぐって検査する「擦過(さっか)細胞診」があります。

 ただし細胞診は、痛みや出血は少ないものの、採取できる検体量が少ないため確定診断が難しいことがあります。乳がんが強く疑われる場合も、さらに詳しい情報を得るため、多くの場合、より大きな細胞が集まった塊を取り出して調べる「組織診」を併用します。

 ◇セルフチェックの習慣化を

 組織診は使用する針が太いので、通常は局所麻酔をして行います。使用する機械の種類により、針生検と吸引式組織生検に分かれています。吸引式組織生検は針生検よりも採取できる組織の量が多く、正確に診断できる確率が高くなります。

 しかし検査後の出血などが問題になる場合もあり、採取したい病変や患者の状態に応じてどちらかの生検方法が選択されます。それでも確定診断が難しい場合は、手術で病変を切除した際などの外科的生検が検討されます。

 最後になりますが、個人でできる対策もあります。定期的に乳房を観察し、しこりなどがないか触って確かめるセルフチェックです。

 がんの発症率が高まる40歳を過ぎれば、定期的な検診を受けるとともにセルフチェックを行い、症状がある場合は速やかに医療機関に相談すること。これが乳がんの早期発見・早期治療にとても重要です。

 乳がんの中には親から子へと、発症リスクを高める遺伝子の「病的バリアント」(バリアントは以前は変異と呼んでいました)が受け継がれるタイプのがんも一部あります。このため人によっては、もっと若いうちからセルフチェックを始め、検診を受けた方がよい場合があります。こうした遺伝性乳がん対策については、改めて紹介します。(東京慈恵会医科大学附属柏病院乳腺・内分泌外科  神尾麻紀子)

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