新生児仮死〔しんせいじかし〕 家庭の医学

[原因]
 胎盤が早くはがれたりその機能がわるかったり、へその緒が圧迫されたりして胎児へ十分に酸素が供給されない場合や、出生後の呼吸や循環が不十分な場合に起こります。新生児仮死の90%は胎児仮死の延長上にあり、出生後の仮死は10%にすぎないといわれています。

[症状]
 生まれたときにうぶ声をあげず、呼吸が抑制され、皮膚色がわるく、手足の動きも不活発になります。皮膚の色調、心拍数、刺激に対する反応、筋の緊張度、呼吸をそれぞれ0~2点の3段階で評価し、4~6点を軽度仮死、3点以下を重度仮死と診断します。生後1分後と5分後に判定しますが、5分後の値のほうが、後遺症の有無や重症度と相関するといわれています。

[治療]
 すぐにのどや気管にたまっている羊水(ようすい:子宮内にあり、胎児が浮いている液体)や粘液を吸引し、酸素を吸わせる処置をします。呼吸が弱い場合は、マスクとバッグで外から酸素を入れたり、さらには空気の通り道を確実に確保するために気管にチューブを入れることもあります。
 その後の状態により、血液が酸性にかたむくのを補正する薬や血圧を維持する薬を点滴したり、酸素吸入の持続や人工呼吸器の装着をします。脳障害(低酸素性虚血性脳症)を合併したときは、脳のむくみをとる薬やけいれんを予防する薬を用います。最近では、頭を冷却することで死亡や後遺症を少なくする治療法(脳低温療法)も行われるようになりました。
 仮死が重篤な場合は死亡したり、命はとりとめても重い脳障害の後遺症を残すことがあります。

(執筆・監修:自治医科大学 名誉教授/茨城福祉医療センター 小児科 部長 市橋 光
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