有機溶剤〔ゆうきようざい〕 家庭の医学

 シンナーや接着剤には有機溶剤のベンゼン、トルエン、キシレンなどが含まれ、この物質を吸引すると、酔っぱらったような感じになったり、気分が大きくなったり、幸福感に満ちたようになったりします。1967年頃から青少年の間でシンナー遊びが流行し社会問題になりました。現実がつらくて薬物の世界が逃げ場になった場合、依存は容易に形成されます。有機溶剤の依存は精神依存であり、身体依存はありません。
 有機溶剤は臓器の障害が多いのが特徴です。手足の知覚や運動の障害、肝臓・腎臓・骨髄の障害、視力の低下、脳波異常などです。
 精神面への影響では、無気力、いらいら、不安感があり、幻覚が出ることもあります。幻覚のような精神病症状は、覚醒(かくせい)剤にくらべると少ないですが、なかには入院治療を必要とする場合もあります。

【参照】
 環境病・職業病:有機溶剤による中毒
 中毒:家庭用品による中毒

(執筆・監修:高知大学 名誉教授/社会医療法人北斗会 さわ病院 精神科 井上 新平)
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