注意欠如・多動症(ADHD)〔ちゅういけつじょ・たどうしょう(ADHD)〕 家庭の医学

 近年、ADHDとして注目されています。精神年齢にくらべて、極端におちつきがなく、注意力が持続しない、じっと座っていられず走り回ったり、待てずに、質問が終わる前に答えたり思いついたことをパッとやってしまうなどの衝動的な行動をする子どもたちです。性差はないといわれますが、行動上の問題は男子に大きく出ます。

[原因]
 脳で情報を伝える神経伝達物質であるドパミンやノルアドレナリンのはたらきが低下していると考えられます。生まれつき脳になんらかの障害があってなる可能性も考えられ、児童虐待などの養育環境の影響でもなると考えられます。

[症状]
 からだをもぞもぞしていたり、授業中でも立って歩き回ったり、走り回って道路に飛び出したりなどという多動性、質問が終わらないのに答えてしまったり、順番が待てない、ほかの人がやっていることにちょっかいを出すなどの衝動性、一つのことに集中して最後まで作業を続けられず、気が散りやすい、不注意によるミスが多く、なくしものが多い、人の話をよく聞いていないなどの注意力障害を示します。多動・衝動性が強いタイプ、不注意が強いタイプ、両方示すタイプがあります。
 知能は正常のことがほとんどですが、限局性学習症やてんかんを合併することもあります。

[治療]
 メチルフェニデート徐放薬、アトモキセチン、グアンファジンおよびリスデキサンフェタミンが治療薬として認められています。薬物治療のみでなく、心理療法、ペアレントトレーニング、環境調整などを同時に実施することも重要です。一つの作業をするときには、まわりにほかの刺激がないなどの刺激の少ない環境をつくることも有効です。
 周囲の人たちから常に怒られ続けて、さらにイライラして多動、衝動性が増すという悪循環になっていることも多く、自信喪失したり反抗的になっていくこともありますので、怒ることを少なくし、励ましてあげるなど、愛情をもって接するようにし、自尊心を育てるようにしましょう。小児神経科医、小児精神科医などと学校、家庭の連携がとても重要です。

【参照】こころの病気:注意欠如・多動性障害

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