腹部全体の痛み 家庭の医学

 腹部全体が激しく痛み、腹壁が硬くなって息をするのも苦しく、熱もあるときは、腹膜炎を起こしている可能性があり、放置すると生命の危険があります。大至急、病院での手当てが必要で、手術しなければならないこともあります。胃や十二指腸潰瘍の穿孔(せんこう)、つまり胃や十二指腸に孔(あな)があいて破れた場合にも、そのような症状になります(胃潰瘍・十二指腸潰瘍)。
 便通がなく、ガスも出ないで、腹部がしぼられるように周期的に痛み、吐くようなときは、腸閉塞のおそれがあります。腹部の手術を受けたことがあるときは、癒着(ゆちゃく)による腸閉塞(イレウス)の可能性が考えられます。
 大腸がんが進行して腸がつまった場合も腸閉塞を起こすことがあります。高齢者の場合、便秘でも腸閉塞状態になってしまうこともあります。
 腹部全体がキリキリ周期的に痛み、吐いたり、下痢をしたりするときは、急性胃腸炎が疑われます。なにか変わったものや、いたんだものなどを食べたときには、その可能性が高くなります。食中毒による腸炎も考えなければなりません。

(執筆・監修:国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 名誉院長 大西 真)