大腸憩室症〔だいちょうけいしつしょう〕 家庭の医学

[原因]
 大腸壁のもっとも弱い部分がふくろ状に外に飛び出した状態をいいます。年齢とともに頻度が上昇することから、加齢により腸壁が弱くなることや、慢性的な硬便、便秘による内圧上昇がおもな原因と考えられています。


[症状]
 発症頻度は年齢とともに上昇し、60歳以上では約20%といわれていますが、大腸の検査で偶然発見されることが多く、ほとんどが無症状です。
 症状としては便通異常・腹部膨満(ぼうまん)感・腹部不快感など、腸管の運動異常によるものが多いのですが、憩室に炎症(憩室炎)が起こると、強い腹痛、下血を伴うことがあります。

[治療]
 症状がない場合は特別な治療は必要ありませんが、予防も兼ねて、硬便、便秘とならないよう食物繊維を多くとるとよいでしょう。症状がある場合は、便通をととのえるために食物繊維を多くとることが重要ですが、症状が強いときは投薬を受ける必要があります。
 憩室炎を起こした場合は、絶食・安静・輸液・抗菌薬といった内科的治療をおこなえば1週間程度で軽快することがほとんどですが、炎症が強く、憩室に孔(あな)があいたとき(憩室穿孔〈せんこう〉)や出血が止まらないとき(憩室出血)は手術を受けなければなりません。

(執筆・監修:医療法人社団哺育会 桜ヶ丘中央病院 外科部長 榎本 雅之)
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