中国・Xi'an Jiao Tong UniversityのAiyong Cui氏らは、米国民健康・栄養調査(NHANES)のデータを用いた横断研究の結果「脂質蓄積産物(lipid accumulation product;LAP)指数と腰椎骨密度(BMD)との間には非線形の関連が認められ、同指数が一定の値を超えると有意な負の相関を示す。LAP指数は骨粗鬆症の予測因子として臨床的な利用価値がある」とSci Rep2025; 15: 16373)に報告した。

脂質毒性の評価指標として提案された脂質蓄積産物

 LAP指数とは脂質の過剰蓄積と中心性肥満を評価する指標であり、男性は〔腹囲(cm)-65〕× 〔トリグリセライド(mmol/L)〕、女性は〔腹囲(cm)-58 〕× 〔トリグリセライド(mmol/L)〕の式で計算される(Lipids Health Dis 2023; 22: 41)。脂質毒性を反映する指標として、近年、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)やインスリン抵抗性、変形性関節症などとの関連が報告されている。しかし、LAP指数とBMDとの関連は確立されていないため、Cui氏らは今回、NHANESから米国成人の腰椎BMDのデータを抽出し、LAP指数との関連を検討した。

 対象としたのは、NHANESの2011~18年の20歳以上、3,883例(男性54.2%、女性45.8%)のデータ。平均年齢は39.33±11.53歳。人種は、非ヒスパニック系の白人が39.35%、非ヒスパニック系の黒人が20.45%、メキシコ系13.73%、他のヒスパニック系9.76%などであった。

ln-LAP 2.846を超えるとBMDが有意に低下

 年齢、性、人種、貧困率(PIR)、教育レベル、BMIを含む全ての変数を調整した多変量線形回帰モデルで、対数変換したLAP指数(ln-LAP)と腰椎BMDとの関連を解析したところ、有意な負の相関が認められた(β=-0.011、95%CI -0.019~-0.004、P=0.00)。

 次に、ln-LAPで四分位に分け、第1四分位群をreferenceとして比較したところ、第4四分位群の参加者の腰椎BMDが有意に低かった(β=-0.038、-0.057~-0.021、傾向のP<0.001)。

 さらに、制限付き三次スプライン(RCS)による解析を行ったところ、ln-LAPと腰椎BMDとの非線形の相関が示された(非線形のP<0.001)。しかし、RCSのグラフにおいて一定の範囲まではIn-LAPと腰椎BMDに有意な相関が認められないことが明らかであったため、閾値効果分析を行ったところ、In-LAP 2.846を変曲点として、その右側から有意な負の相関が見られることが判明した〔In-LAP<2.846の場合:β=0.011、95%CI -0.007~0.029、P=0.351、In-LAP>2.846の場合:同-0.029、-0.050~-0.006、P<0.001〕。

 年齢(50歳未満と以上)、性、人種、糖尿病高血圧の有無、喫煙歴、飲酒歴、運動、教育レベルなど、さまざまな患者背景別のサブグループによる相互作用解析を行ったが、In-LAPと腰椎BMDとの相関に有意な影響を与えるものはなかった(全ての相互作用のP>0.05)

大腿骨BMDとの関連を検討する必要あり

 以上の結果を踏まえ、Cui氏らは「米国の代表的な栄養調査データを用いて、ln-LAPと腰椎BMDとの非線形の負の相関を確認した。今回の知見は、骨粗鬆症の予測因子としてのLAP指数の臨床的有用性を支持するものである。全てのサブグループ解析で相互作用が確認されなかったことから、他の集団にも適用可能と考えられる」と結論。「関連データが得られなかったので大腿骨BMDとLAP指数との関連は解析できなかったため、今後の検討が必要である」と付言している。

(医学ライター・木本 治)