米国予防医学専門委員会(USPSTF)は、骨粗鬆症の診断や脆弱性骨折の既往歴がない40歳以上の成人における骨折予防目的の骨粗鬆症スクリーニングの有益性と有害性のエビデンスを評価するシステマチックレビューを実施。その結果に基づき推奨事項を更新しRecommendation Statement(以下、勧告)としてまとめ、JAMA2025年1月14日オンライン版)に発表した。65歳以上の女性および65歳未満で骨粗鬆症リスクが高い閉経後女性に対しては二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)を用いたスクリーニングの実施を推奨する一方、男性はエビデンスが不十分のため推奨できないとしている。(関連記事「骨粗鬆症検診、受診率増の鍵は肺がん検診」)

2018年版の勧告を更新

 骨粗鬆症は骨量の減少を特徴とする骨格障害であり、骨の脆弱性と骨折リスクの増大をもたらす。骨粗鬆症骨折(股関節、脊椎、手首、肩の骨折)は、精神的苦痛、その後の骨折、自立性の喪失、日常生活動作(ADL)の低下、死亡と関連している。50歳以上の米国地域在住者における骨粗鬆症の年齢調整有病率は12.6%と、8人に1人が悩まされている。有病率は、65歳以上(女性27.1%、男性5.7%)、女性(同19.6%、4.4%)、アジア系、ヒスパニック系、白人で高い。

 USPSTFは米国民の健康増進に資するために、明らかな関連徴候や症状のない者に対する特定の予防医療サービスの有効性についての勧告を行っている。今回、骨粗鬆症のスクリーニングに関する2018年版の勧告(JAMA 2018; 319: 2521-2531)を更新する目的で、米・システマチックレビューを実施した。

スクリーニングで股関節骨折リスクが17%低下

 その結果、ランダム化比較試験(RCT)3件とシステマチックレビュー3件が、高齢で骨粗鬆症骨折リスクの高い女性における骨粗鬆症スクリーニングの有益性を報告していた。RCTのうち2件は骨折リスク評価ツールによる推定とリスク閾値を超えた場合の骨密度(BMD)検査という2段階のスクリーニングを採用し、残る1件は骨密度と追加検査を併用していた。通常治療と比べ、スクリーニングの実施は股関節骨折〔プール相対リスク(RR)0.83、95%CI 0.73~0.93、RCT 3件・4万2,009例〕および主要な骨粗鬆症骨折(同0.94、0.88~0.99、RCT 3件・4万2,009例)の減少と関連していた。スクリーニング受診による1,000人当たりの絶対リスク差(骨折減少)は5~6件と推定された。

 骨折の予測または骨粗鬆症の同定に対するリスク評価ツールの判別能は、ツールおよび骨折の種類により異なっていた。大半のツールでは、主要な骨粗鬆症骨折、股関節骨折、またはその両方を予測するための曲線下面積は0.60~0.80だった。キャリブレーションの結果は限られていた。プラセボと比べ、ビスホスホネート(プールRR 0.67、95%CI 0.45~1.00、RCT 6件・1万2,055例)とデノスマブ(同0.60、0.37~0.97、RCT 1件・7,808例)は、股関節骨折の減少と関連していた。有害事象について、プラセボとの有意差は観察されなかった(JAMA 2025年1月14日オンライン版)。

 これらを踏まえ、USPSTFは①65歳以上の女性における骨粗鬆症骨折予防のための骨粗鬆症スクリーニングを推奨する (推奨度B)②臨床的リスク評価により骨粗鬆症のリスクが高いと推定される65歳未満の閉経後女性において、骨粗鬆症骨折予防のための骨粗鬆症スクリーニングを推奨する(推奨度B)③男性における骨粗鬆症骨折予防のための骨粗鬆症スクリーニングの有益性と有害性のバランスを評価するには、現在のエビデンスは不十分である(推奨度Ⅰ)-と結論(表1)。

表1. 臨床医向け概要:骨粗鬆症スクリーニングによる骨折予防

 リスク評価ツールの特徴については、表2のように提示。スクリーニング間隔については、コホート研究から4~8年間隔で骨密度検査を繰り返しても骨折の予測精度の向上にはつながらないことが示唆されているとし、一般的にベースラインのTスコアが低値で高齢な者ほど短い間隔で骨粗鬆症への移行が起こる(例:ベースラインの骨密度が正常な女性の10%が骨粗鬆症を発症するまでに約17年かかるのに対し、ベースラインのTスコアが-1.50~-1.99の範囲にある女性では約5年と短い)と述べるにとどめている。

表2. 骨粗鬆症または骨粗鬆性骨折リスク評価ツールの特徴

(表1、2ともJAMA 2025年1月14日オンライン版)

 その他の関連する勧告として、USPSTFは転倒リスクが上昇している65歳以上の地域在住者に対し転倒予防のための運動介入を推奨しており、過去の転倒状況、併存疾患の有無、患者の価値観や嗜好に基づいて選択的に多因子介入を行うことを推奨している。また2018年版勧告では、閉経後女性における骨折予防目的での400IU以下のビタミンDおよび1,000mg以下のカルシウムの補充に反対していた。同様に今回の勧告でも、地域在住の閉経後女性および60歳以上の男性における骨折の初発予防目的でのビタミンD補給にはカルシウム併用の有無を問わず反対している。

編集部・関根雄人