成人脊柱変形〔せいじんせきちゅうへんけい〕

 わが国ではこれまで歴史上でも人類が経験したことのない高齢化が急速に進行しています。それに伴い中高年齢層における脊柱変形が大きな問題として注目されています。
 ヒトは頭蓋、脊柱、骨盤、下肢が調和してバランスよく維持されることにより、エネルギー効率よく立位や歩行を続け、広く前方を見ることができます。いったん背骨に高度の変形が生じると、支えなしには立位や歩行を続けることができなくなり、腰曲がりが強くなると、うつむき加減になり、前方を楽に見ることができなくなります。側彎変形(背骨が横に曲がる)、後彎変形(背骨が前に曲がる)が強くなると頑固な腰痛が生じ、日常動作が大きく制限され、生活の質も低下します。さらに脊柱変形が進むと、呼吸機能が低下し、生命予後を低下させる要因にもなります。このようにおもに加齢に伴う背骨の変形により、腰痛、下肢痛、歩行障害をきたした場合は成人脊柱変形と呼ばれます。
 原因としては加齢に伴う椎間板の変性、変形のほか、骨粗鬆症に伴う脊椎圧迫骨折があげられます。また若年発症の側彎症に加齢的変化が加わって発症する場合もあります。


[治療]
 成人脊柱変形に伴う疼痛に対しては、アセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬、オピオイド等が投与されます。装具療法の効果は小児の脊柱変形にくらべ、限定的です。背筋を中心とした体幹筋の強化、ストレッチングとともに股関節を中心とした下肢の運動療法をおこない、日常動作や運動能力の低下を防ぐことが重要です。ノルディックウオーキングは姿勢と運動能力の改善のうえで、有用です。
 疼痛や歩行能力低下が強く、日常生活に大きな支障が生じた場合には、手術療法も検討されます。骨盤と背骨の関係をよく評価したうえで、変形した背骨をチタンなどのネジやロッドを用いて、矯正固定します。疼痛、歩行能力とも改善されますが大きな手術であり、手術に伴う合併症の頻度も高いため、しっかりと医師と相談して治療法を決めることが重要です。

(執筆・監修:日本赤十字社医療センター脊椎整形外科 顧問 久野木 順一)