性感染症の種類 家庭の医学

 性行為(オーラルセックスなどの広い範囲の性行為・性的接触を含む)によって媒介される微生物の感染を性感染症(sexually transmitted infection:STI)と呼びます。
 かつては、淋病(りんびょう)梅毒(ばいどく)軟性下疳(なんせいげかん)、鼠径(そけい)リンパ肉芽腫(にくげしゅ)の4種類だけが性行為で感染すると考えられており、これらの4疾患を性病(sexually transmitted disease:STD)と呼んでいました。しかし、性的接触で感染する感染症は、ほかにも多く存在することや、エイズ(AIDS、ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染症)子宮頸がん(ヒト乳頭腫ウイルス感染)のように、症状がなくても性的接触を介した感染が原因で発症する疾患があきらかとなり、もっと広い意味で使われるようになっています。性感染症を起こす微生物は、細菌、ウイルス、真菌、寄生虫・原虫など多様で、その種類によって症状や治療法は異なります。
 公衆衛生や抗菌薬治療の進歩により、軟性下疳や鼠径リンパ肉芽腫症は、日本では少なくなってきました。しかし、梅毒は以前にくらべれば大幅に減少したものの、2003年ごろから男女ともに増加傾向に転じています。特に20歳代男女で異性間性交渉による早期梅毒の増加が顕著で、社会問題に発展しつつあります。なお、新規患者数は、2011年から2018年まで毎年増加しており、2013年に1228人と1000人を超えると、2018年には6923人まで急速に増加しました。2019年、2020年は6641人、5784人と前年比で減少傾向が続きましたが、2021年は新型コロナウイルス感染症流行の影響により、毎年流行しているほかの多くの感染症の患者報告数が減少しているにもかかわらず、7873人と過去最多の報告数を更新しています(国立感染症研究所調べ)。また、クラミジア感染症と淋菌感染症も、2002年をピークに減り続けていましたが、2010年以降横ばいからふたたび増加する傾向があり、梅毒同様に新型コロナ感染症が猛威を振るった2020年以降も減少傾向がみられていないため注意が必要です。

●年別梅毒総報告数(件)の推移(2003~2021年)
2003年2004年2005年2006年2007年2008年2009年2010年2011年2012年
509536543637718831691621827875
2013年2014年2015年2016年2017年2018年2019年2020年2021年
122816612690455758296923664157847873
(国立感染症研究所ホームページより引用改変)


(執筆・監修:自治医科大学 腎泌尿器外科学講座 講師〔泌尿器科〕 亀井 潤)
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