植皮術・皮弁 家庭の医学

 皮膚など体表面の欠損を再建するための方法です。皮膚は腎臓や心臓などより、移植したあとの免疫反応(拒絶反応)が強く出やすい傾向があります。このため、原則的に自分の皮膚を移植に用います(自家植皮)。
 例外的に重症熱傷の患者さんには、他人の皮膚を移植する方法(同種植皮)が用いられることがあります。

■植皮術(しょくひじゅつ)
 いわゆる皮膚移植です。病変部とは別の部位から皮膚だけを採取して移植する方法です。
 簡単な手術法ですが、薄い皮膚だけを移植するため、術後に色素沈着やひきつれなどを起こすことがあります。一般的には、熱傷(やけど)など、皮膚または皮下脂肪までの浅い組織欠損に対して用いられます。


■皮弁(ひべん)
 皮膚だけでなく、皮下脂肪などを付けた状態で病変部へ移植する方法です。血行を維持するため、皮弁の一部はからだと連続したまま近くに移動します。皮弁をいったん切り離して、離れた部位へ移植する方法を遊離組織移植術と呼びます(微小外科〈マイクロサージャリー〉)。
 植皮術よりも厚い組織を移植できるため、筋肉や骨が露出したような深い組織欠損に用いることができます。たとえば、乳房の再建や褥瘡(じょくそう)の治療に応用されています。


■同種植皮(スキンバンク)
 重症熱傷の場合は移植するための皮膚が足りないため、他人から採取された皮膚を用いることがあります。同種植皮は日本スキンバンクネットワークが管理しており、ご遺体から提供された皮膚を凍結保存して用います。

(執筆・監修:埼玉医科大学 教授〔形成外科・美容外科〕 時岡 一幸)
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