脂質(脂肪)のとりかたと生活習慣病 家庭の医学

 食事摂取基準の脂質、脂肪酸の適正な摂取量の策定にあたり、生活習慣病の予防という観点から、多くの研究成果や諸外国の食摂取基準をもとに検討がされました。
 最近の日本人の栄養のとりかたを国民健康・栄養調査からみてみましょう。1975年(2188kcal、52.0g)と2019年(1903kcal、61.3g)をくらべると、エネルギーは285kcal減少し、脂質の摂取量は52.0gから61.3gとふえていますが、エネルギー比率は29%と上限値ぎりぎりのところで、適正な値にとどまっています。

 また、飽和脂肪酸、n-3系脂肪酸、n-6系脂肪酸ともに、食事摂取基準で示された数値にほぼ近くなっています。しかし、標準偏差(平均からのバラツキ)が大きく、個人差が大きいことが示されています。糖尿病や脂質異常症の発症リスクには、脂肪酸の種類が問題となっていますので、量より質を重要視する必要性が示されています。
 脂質の給源は、「肉類」や「揚げ物・炒め物に使われている油」「サラダやマリネなどに使われるマヨネーズや酢油」のほかに、スナック菓子やケーキやクッキーなどに含まれている油(バター、マーガリン、ショートニング等)など、脂肪酸という観点からみた場合に、脂肪酸の種類は、さまざまになります。
 脂肪の摂取量が多い人は、まず、食事以外からとっている脂肪を減らすようにします。肉と魚の比率では、やや魚を多めにする、牛乳・乳製品は200~250gにとどめ、多く飲みたい場合には、脂肪の少ない製品にする(生クリームは除いて考えます)、料理に使う油は、サラダ油に限らずオリーブ油、えごま油などの油を、料理によって使い分けるなどの工夫をされるとよいでしょう。
 最近、健康を売りにいろいろな油脂が、販売されていますが、脂質のエネルギーは、どれも1g=9kcalですから、たくさんとれば、エネルギー過剰の原因となります。容器には、必ずカロリーが表示されています。100gあたり900kcal前後のはずですから、確認する習慣をつけることをすすめます。
 脂質を適切にとるための具体的な実践方法については、脂質異常症の項(高脂血症の食事療法)を、参照してください。

(執筆・監修:金沢学院大学 栄養学部栄養学科 特任教授 宮本 佳代子)