肥満と生活習慣病

 肥満はあらゆる生活習慣病の危険因子(リスクファクター)です。ここでは、はじめに肥満とはなにか述べておきます。
 肥満とは、体脂肪量が多い状態をいいます。しかし、体脂肪量を正確に測定するのは日常的ではありません。スポーツ選手のように特別な筋肉トレーニングをしていなければ、脂肪量と体重は相関しますので、実用的な指標として体重が使われています。肥満の判定にはBMI(Body Mass Index)という指数が用いられています。BMIは次の計算式で求めることができます。

●自分のBMIを求める計算式
 BMI = 体重(kg)÷ 身長(m)÷ 身長(m)


 日本肥満学会ではこの指数を用いて肥満度の分類をしています。25以上を肥満として、18.5以上25未満をふつう体重とし、BMI:22を標準体重(理想体重)としています。この22という指数は疫学的な調査からもっとも病気が起こりにくい、身長に対する体重の割合です。自分の標準体重を求めるには前記の計算式の逆算をすればよいことになります。

●肥満度の分類
BMI(kg/m2判定WHO基準
   <18.5低体重Underweight
18.5≦~<25ふつう体重Normal range
25≦~<30肥満(1度)Pre-obese
30≦~<35肥満(2度)Obese classⅠ
35≦~<40肥満(3度)Obese classⅡ
40≦肥満(4度)Obese classⅢ
(日本肥満学会編:肥満症診療ガイドライン2016、ライフサイエンス社)


●自分の標準体重を求める計算式
 標準体重(kg)= 身長(m)× 身長(m)×22


 これで求めた体重のおよそ±10%幅で、それぞれの体質にあわせた体重管理をすればよいでしょう。近年は家庭で体脂肪量を簡便に測定することができる体重計が売られていますが、それらの多くはからだの水分量を測定し、水分量から体脂肪量を求める計算式で体脂肪率(体重に占める体脂肪の割合)を求めたもので真の体脂肪率とは異なります。家庭用の体重計で体脂肪率が測定できる体重計をもっている人で、体重が減ったのに体脂肪率がふえてしまったとか、反対に体重がふえたのに体脂肪率が減ったという経験をもつ人がいるかと思いますが、これは、からだの水分量の影響を受けているためです。しかし、毎日、測定していれば、大きな変動になっていないことがわかりますので、大きな問題とはなりません。
 日本肥満学会では肥満の定義は「BMI」でおこなっており、適正な体脂肪率についての具体的な数値は示しておりません。体脂肪率が測定できる体重計の説明文書を調べてみると、成人男性では20%以上を、成人女性では30%以上を肥満の目安と判定しています。体脂肪が測定できる体重計はあくまで推定値なので「体脂肪が多めかな?」と考える目安とされるといいでしょう。
 また、同じ体脂肪率でも脂肪のつきかたで生活習慣病の発症の危険性(リスク)が違うとされています。内臓に脂肪がつく「内臓脂肪型肥満」と、皮下に脂肪がつく「皮下脂肪型肥満」とがあり、前者のほうが生活習慣病の発症のリスクが高いといわれています。からだのどこに脂肪がついているかは、正確にはCT(コンピュータ断層撮影)検査で調べますが、これも実用的ではありませんので、ウエスト周囲長が使われています。内臓脂肪型肥満の判定基準はウエスト周囲長が男性では85cm以上、女性では90cm以上です。また、ふとりかたの表現として、「洋梨型肥満」「リンゴ型肥満」といわれる肥満の前者は「皮下脂肪型肥満(または臀〈でん〉部型肥満)」で、後者は「内臓脂肪型肥満(または腹部型肥満)」を指しています。
 「やせの大食い」「水を飲んでもふとる」「ふとる体質」などいろいろいわれますが、たしかに、エネルギーの利用効率の個人差は200~300kcalあるといわれていますので、厳密に考えれば、ダイエットの効果に個人差はあります。しかし、一人ひとりについて考えた場合には、消費エネルギーに対し摂取エネルギーがプラスになればふとり、マイナスになればやせます。また、体重は、そのときどきの体内の水分量によって多少は違います。食事をすれば見かけの体重はふえます。しかし、それは肥満の本来の定義である「体脂肪量」の増減ではありません。体重はいつも同じ条件で測定し、1kg程度の上下であれば「変化なし」と考えてよいでしょう。
 肥満が発症リスクを高める健康障害を表にまとめました。なお、日本肥満学会では、「肥満」と「肥満症」として分けて考えています。

●肥満に起因ないし関連し、減量を要する健康障害
1.肥満症の診断基準に必須な健康障害
 1)耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)
 2)脂質異常症
 3)高血圧
 4)高尿酸血症・痛風
 5)冠動脈疾患:心筋梗塞・狭心症
 6)脳梗塞:脳血栓症・一過性脳虚血発作(TIA)
 7)非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)
 8)月経異常・不妊
 9)閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)・肥満低換気症候群
 10)運動器疾患:変形性関節症(膝・股関節)・変形性脊椎症、手指の変形性関節症
 11)肥満関連腎臓病
2.診断基準にはふくめないが、肥満に関連する健康障害
 1)悪性疾患:大腸がん、食道がん(腺がん)、子宮体がん、膵臓がん、腎臓がん、
乳がん、肝臓がん
 2)良性疾患:胆石症、静脈血栓症・肺塞栓症、気管支喘息、皮膚疾患、男性不妊、
胃食道逆流症、精神疾患
3.高度肥満症の注意すべき健康障害
 1)心不全
 2)呼吸不全
 3)静脈血栓
 4)閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)
 5)肥満低換気症候群
 6)運動器疾患
(日本肥満学会編:肥満症診療ガイドライン2016、ライフサイエンス社)


●肥満と肥満症の定義
《肥満の定義》
脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態で、体格指数(BMI=体重[kg] /身長[m]2≧25のもの
《肥満症の定義》
肥満症とは肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか、その合併が予測される場合で、医学的に減量を必要とする病態をいい、疾患単位として取り扱う
(日本肥満学会編集委員会編:肥満症診療ガイドライン2016、ライフサイエンス社)


 肥満症は、治療の対象となる疾患です。肥満の食事療法の理論は実に明快で「食べた量(エネルギー)-使ったエネルギー=マイナスの数値」にすればいいのです。しかし、多くの人が苦戦しています。予防するのが賢明です。
 実践方法の詳細は糖尿病・肥満の項(糖尿病の食事療法)を参照してください。