アルコールの功罪 家庭の医学

 大人が集まって食事をする場には、必ずといっていいほどアルコールが食卓に並びます。アルコールは、どんな役割を果たしているのでしょうか。アルコールは、気持ちをリラックスさせてくれます(この程度の飲みかたが適量です)。会話が弾み、食事をおいしくする役割もあります。どれも栄養的な役割ではありません。
 もっとも、最近、「適度な」飲酒は、からだによいという報告もありますが、アルコールはやはり「食事の潤い」です。この適度には、個人差がありますが、厚生労働省が、「節度ある適度な飲酒」としては、1日平均純アルコール量で約20g程度という指針を示しています。
 以下にアルコール20gを含むアルコール飲料の量を示しますが、市販のアルコール飲料は「mL」表示が多いと思います。アルコールは1mL=1gにはなりませんが、「mL」を「g」に読み替えても大きな差は生じません。

●アルコール20gを含むアルコール飲料
種類アルコールの濃度
(%)
アルコール20gを含む量
(g)
清酒15130
ビール(淡色)5400
ぶどう酒(赤)12180
しょうちゅう(35度)3560
ウイスキー・ブランデー4350


□アルコールの罪
 常習的にアルコールを大量に飲むと、肝疾患、膵(すい)疾患、脳卒中等の原因となります。しかし、日常的に多い問題は、おつまみも含め食が進みエネルギー量が多くなりがちになったり、反対に、食事をせずにアルコールばかりを飲み、栄養がとれないことなどです。
 いっぽうで、アルコール依存症や未成年者の飲酒、若者の一気飲みなどの諸問題がありますが、これらは精神面からのはたらきかけや社会環境の整備などの問題がからみ、食生活の改善では、解決がむずかしい問題です。
 厚生労働省では、「健康日本21」でアルコールについて、次の目標を掲げています。

 1.1日に平均純アルコールで約60gを超え多量に飲酒する人の減少。
 2.未成年の飲酒をなくす。
 3.「節度ある飲酒」としては、1日平均純アルコールで約20gである旨の知識を普及する。

 アルコールは食事をおいしくしたり、会話を楽しくしたりするための潤滑油です。適量をゆっくり楽しく飲んでください。アルコール健康医学協会では、アルコールは食事をしながらゆっくり飲む、週2日くらいはアルコールを飲まない日をつくることなどをすすめています。

(執筆・監修:金沢学院大学 栄養学部栄養学科 特任教授 宮本 佳代子)