男性性器の病気 家庭の医学

コラム

男性不妊

 通常の性行為をおこなっているにもかかわらず12カ月以上自然妊娠に至らないものを不妊症と定義しています。発生は15%程度といわれています。
 男性不妊の原因は大きく分けると、精子の形成に問題がある、精路(精子の通り道)が閉塞している、性機能に障害がある(勃起障害や射精障害など)の3つに大別されます。
 診察では精巣の大きさや精索静脈瘤の有無をみます。血中ホルモン検査ではLH、FSH、テストステロンなどが重要です。
 精索静脈瘤のある場合は手術することにより、精液の所見が改善し自然妊娠が得られることがある程度期待されます。
 精路の閉塞がある場合は精路再建がおこなわれますが、難しい場合などは、精巣上体から精子を吸引して採り出す顕微鏡下精巣上体精子吸引術(MESA)や経皮的精巣上体精子吸引術(PESA)があります。これらの方法で精子が得られない場合は精巣から直接精子を採り出す精巣内精子採取術(Testicular sperm extraction、TESE)がおこなわれます。これらの方法で精子が確保されれば、卵細胞内に直接精子を注入することで受精卵を得ることができます(卵細胞質内精子注入法、Intracytoplasmic sperm injection、ICSI)。

(執筆・監修:東京大学大学院医学系研究科 教授〔泌尿器外科学〕 久米 春喜)