人工知能(AI)を活用して歩き方などを分析し、認知症の早期発見や見守りにつなげる取り組みが進められている。症状の進行に気づかず受診が遅れたり、徘徊(はいかい)したりするリスクを軽減し、高齢者本人や家族の不安感を和らげるのが狙いだ。
 富士通傘下のコンサルティング会社リッジラインズ(東京)は2月から、国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)、AIベンチャーのノエル(名古屋市)とともに、認知症特有の歩き方の特徴を感知する仕組みを開発している。解析には、富士通が開発した体操競技の採点支援システムに使われる、姿勢認識のAI技術を活用。公共施設などのカメラ映像から小刻みな歩行といった認知症「兆候」を検出、周囲からの声掛けを促す。
 今後はプライバシー保護のため情報管理のルール作りや介護施設の協力を得て分析を進め、2027年度の実用化を目指す。厚生労働省は、高齢者の人口がほぼピークとなる40年に、65歳以上の約3人に1人に当たる約1197万人が、認知症か前段階の軽度認知障害(MCI)になると推計。リッジラインズの川嶋孝宣ディレクターは「誰もが認知症になりうる。行動制限や監視ではなく、日常生活の中で見守る仕組みをつくりたい」と意気込む。
 自分自身でチェックができるAIは先行して実用化が進む。認知症治療薬「レカネマブ」を手掛けるエーザイは、生活に関する質問に答えると認知機能低下リスクを予測してくれるAIの開発に着手。早期受診や生活の見直しにつなげてもらう狙いで、24年度中にスマートフォンなどで提供を始める計画だ。ディー・エヌ・エー(DeNA)子会社は、音声で日付などを答えるとAIが認知機能の変化を判別するスマホアプリを、自治体などに提供している。 (C)時事通信社