蚊には、人間や動物の皮膚で血を吸う時間が長引くと攻撃される危険があるため、満腹になる前に吸血をやめる習性がある。この習性を巡り、理化学研究所と東京慈恵会医科大の研究チームは、血液中の分子が、蚊に「腹八分目」で吸血を止めさせるシグナルになっていることを突き止めた。20日付の米科学誌セル・リポーツ電子版に発表した。蚊の吸血行動を制御する仕組みの解明は、感染症抑制などへの応用が期待できるという。
 理研の佐久間知佐子上級研究員と慈恵医大の嘉糠洋陸教授らが、ヤブカの仲間のネッタイシマカを使い、マウスからの直接吸血と、赤血球に含まれるアデノシン三リン酸(ATP)のみを取り出した溶液を吸わせた場合を比較したところ、マウスからの吸血の方が摂取量が少なかった。
 次に、血液から赤血球などを除去した血清成分をATP溶液に加えると、ATP溶液のみのときより満腹になる蚊が少なく、血清中に吸血を止める物質があることが分かった。
 血清の成分を細かく分けて調べたところ、けがなどで血液が凝固する際に最初に生じる分子「フィブリノペプチドA」(FPA)が吸血停止に関連していた。
 FPAは、蚊が血管に針を刺したことをきっかけに血中で産生。吸血を続けると蚊の体内でも濃度が次第に高まり、これを検知して吸血を止めることが分かった。
 佐久間さんは「FPAを取り込ませることができれば、人為的に吸血を阻害できるのではないか」と話している。 (C)時事通信社