毛孔性苔癬(LPP)は、進行性で永久的な脱毛を伴う瘢痕性脱毛症の一種で、症状は灼熱痛から痒みまで多岐にわたり、強い精神的苦痛を伴うが、有効な治療法は限られる。米・Northwell HealthのNatalia Pelet Del Toro氏らは、米国の成人におけるLPPの有病率を推定し、皮膚科医による治療パターンを検討した結果をJAMA Dermatol(2024年6月12日オンライン版)に報告。多くの患者が併用療法や治療薬の切り替えを経験しており、薬剤選択に関するさらなる知見が必要な実態を浮き彫りにした。
調整後有病率は10万人当たり13.4人
Toro氏らは、全米40以上の医療提供ネットワークと5,300万人以上の患者データを有するExplorysデータベースを用いてLPPの有病率および皮膚科医によるLPPの治療パターンを評価した。有病率解析では15%のランダムサンプルを用いて、2017〜19年にLPPと診断された患者を特定した。LPP治療パターン解析では、2016〜20年にLPPと診断され、診断後1年間に皮膚科医の診察を受けた全ての患者を対象とした。
有病率の解析対象となった146万6,832例のうちLPP患者は241例〔女性222例(92.1%)、年齢中央値63歳(範囲54〜73歳)〕で、LPPの粗有病率は10万人当たり16.4人(95%CI 14.5〜18.6人)、年齢および性を調整した全有病率は10万人当たり13.4人(95%CI 11.7〜15.1人)だった。年齢調整後有病率は女性が男性に比べ高かった〔10万人当たり22.7人(95%CI 19.7〜25.7人) vs. 10万人当たり2.9人(同1.6〜4.3人)〕。年齢別に見ると70〜79歳の有病率が最も高かった(10万人当たり25.8人)。
主な治療はILC、TCS、ドキシサイクリン
LPP治療パターンの解析対象となった全LPP患者は991例〔女性907例(91.5%)、年齢中央値60歳(範囲47〜69歳)〕だった。このうち635例(64.1%)が1種類以上の薬物療法を受けており、主な薬剤は、局注ステロイド療法(ILC、370例、37.3%)、ステロイド外用薬(TCS、342例、34.5%)、経口ドキシサイクリン(104例、10.5%)、ヒドロキシクロロキン(72例、7.3%)であった。その他、まれな治療法としては5-α還元酵素阻害薬(23例、2.3%)、全身性免疫抑制薬(11例、1.1%)、ピオグリタゾン(3例、0,3%)が処方されていた。JAK阻害薬の処方基準を満たした患者はいなかった。
診断から1年以内に単剤治療を受けるケースが最も多く(395例、39.9%)、2種類または3種類の治療を受けた患者も多かった〔それぞれ137例(13.8%)、74例(7.5%))。
一般的な初回治療はILC(301例、47.4%)とTCS(299例、47.1%)だった。1年治療を継続しているケースは、ILC〔200例中71例(35.5%)〕、ヒドロキシクロロキン〔29例中7例(24.1%)〕で多かった。
治療開始後1年の間に201例(20.3%)で併用療法が行われ、最も頻度の高いものは、ILC+TCS(90例、44.8%)、次いでTCS+ドキシサイクリン(64例、31.8%)だった。
治療開始後1年以内に別の治療法または併用療法に切り替えた患者のうち、最も割合が多かった初回治療薬はヒドロキシクロロキン(10人中7人)で、次いで経口ステロイド(18例中8例)、経口免疫抑制薬(3例中1例)、経口ドキシサイクリン(20人中7人)だった。1年後の治療切り替えは、初回ILC処方の患者254例中32例(12.6%)、初回TCS処方の患者194例中44例(22.7%)に見られた。
治療レジメンの最適化、新たな標的療法の開発が必要
以上から、Toro氏らは「LPPの標準化された全有病率は、米国成人10万人当たり13.4人であった。LPPは女性と高齢者に多い。LPP患者のほとんどは、少なくとも1つの皮膚科医処方の治療を受けており、約20%の患者は初診時に併用療法を受けていた。ILCおよびTCSによる単剤療法が初回および全般的な治療で最も多く、次いでドキシサイクリンとヒドロキシクロロキンだった。多くの患者は1年を過ぎても治療を継続し、主にILCまたはヒドロキシクロロキンの投与を受けていた。ヒドロキシクロロキンまたは全身療法による初期治療を受けた患者は、1年以内に別の薬剤または併用療法に切り替える傾向が強かった。LPPの治療レジメンを最適化し、新しい標的療法を開発するため、今後の研究が必要である」と述べている。
(編集部)