中国・The Second Affiliated Hospital of Chongqing Medical UniversityのChang Liu氏らは、脳主幹動脈閉塞(LVO)による急性虚血性脳卒中(LVO-AIS)を発症後24時間以内の患者500例超を対象に、血管内治療(EVT)による90~100%再灌流達成後の血栓溶解薬ウロキナーゼ動脈内投与の有効性と安全性を多施設ランダム化比較試験(RCT)POST-UKで検討。その結果、EVT後のウロキナーゼ動脈内投与により治療後90日時点における無障害生存率〔modified Rankin Scale(mRS)スコア0/1達成率〕は有意に改善しなかったものの、頭蓋内出血リスクの上昇は見られなかったとJAMA(2025年1月13日オンライン版)に発表した(関連記事「血管内治療後tenecteplase動注に頭蓋内出血リスク」)。
90日無障害生存率:対照群40.2% vs. ウロキナーゼ群45.1%
POST-UKでは、中国の35施設で最終未発症確認時刻から24時間以内にEVTを実施しexpanded Thrombolysis In Cerebral Infarction(eTICI)スコア2c~3(90~100%再灌流)を達成した18歳以上のLVO-AIS患者535例(年齢中央値69歳、女性41.8%)を登録。ウロキナーゼ10万IUを単回動脈内投与するウロキナーゼ群と動脈内血栓溶解療法を実施しない対照群に1:1でランダムに割り付けた。なお、EVT実施前に血栓溶解薬を静脈内投与した患者は除外した。
試験を完遂した532例(各群266例)を解析した結果、有効性の主要評価項目とした治療後90日時点における無障害生存率に両群で有意差はなかった〔対照群40.2% vs. ウロキナーゼ群45.1%、調整後リスク比(RR)1.13、95%CI 0.94~1.36、P=0.19〕。
90日全死亡、頭蓋内出血も有意差なし
安全性の主要評価項目とした治療後90日時点での全死亡率(対照群17.3% vs. ウロキナーゼ群18.4%、調整後ハザード比1.06、95%CI 0.71~1.59、P=0.77)、EVT実施後48時間以内の症候性頭蓋内出血の発生率(同4.1% vs. 4.1%、調整後RR 1.05、95%CI 0.45~2.44、P=0.91)にも有意差はなかった。
さらに、EVT実施後48時間以内の画像診断上での頭蓋内出血の発生率(対照群24.7% vs. ウロキナーゼ群25.8%、調整後RR 1.10、95%CI 0.82~1.47、P=0.52)、治療後90日時点での機能的自立(mRSスコア0~2)の達成率(同52.3% vs. 53.8%、1.04、0.89~1.20、P=0.64)、EQ-5D-5L質問票で評価した健康関連QOL(P=0.38)などの副次評価項目についても両群で有意差はなかった。
Liu氏らは「今回の試験では、評価項目の検討は盲検下で実施されたものの、ランダム化は非盲検下で実施された」と研究の限界を指摘した上で、「LVO-AISの患者において、EVTによる90~100%再灌流達成後にウロキナーゼ動脈内投与を実施しても無障害生存率の有意な改善は認められなかった。安全性に関しては、ウロキナーゼ動脈内投与による頭蓋内出血の有意な増加は認められなかった」と結論している。
(医学翻訳者/執筆者・太田敦子)