米・University of Alabama at Birmingham Heersink School of MedicineのLori L. Davis氏らは、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対する非定型抗精神病薬ブレクスピプラゾールと選択的セロトニン再取り込み阻害薬セルトラリンの併用療法について検討した第Ⅲ相二重盲検並行群間ランダム化比較試験(RCT)の結果をJAMA Psychiatry(2024年12月18日オンライン版)に発表した。ブレクスピプラゾール+セルトラリン群ではプラセボ+セルトラリン群と比べ、9週間の治療でCAPS-5(Clinician-Administered PTSD Scale for DSM-5)総スコアにより評価したPTSD症状が有意に改善した(関連記事「米・FDA、成人のPTSDに対するブレクスピプラゾール、セルトラリン併用療法の追加承認申請を受理」)。
1~10週のCAPS-5総スコア変化、プラセボ群と5.59点差
セルトラリンは日本や米食品医薬品局(FDA)で唯一承認されているPTSDの治療薬だが、治療抵抗性を示す患者が一定数いるため、新たな治療選択肢が求められている。同試験では、米国の86施設でベースライン(試験開始前)のCAPS-5総スコアが33以上の18~65歳の外来PTSD患者を登録。1週間のrun-in期間(二重盲検プラセボ投与)後に、416例(平均年齢37.4歳、女性74.5%)をブレクスピプラゾール2~3mg/日+セルトラリン150mg/日投与群(ブレクスピプラゾール併用群、214例)とプラセボ+セルトラリン150mg/日投与群(プラセボ群、202例)に1:1でランダムに割り付けて11週間治療した。
ランダム化(投与1週)時点の平均CAPS-5総スコアは、ブレクスピプラゾール併用群が38.4点(標準偏差7.2点)、プラセボ群が38.7点(同7.8点)だった。
主要評価項目とした投与10週時点におけるCAPS-5総スコアの投与1週時点からの(治療9週間での)変化量は、プラセボ群(最小二乗平均変化量-13.6点、標準誤差1.2点)と比べ、ブレクスピプラゾール併用群(同-19.2点、1.2点)で有意に大きかった(プラセボ群との最小二乗平均差-5.59点、95%CI -8.79~-2.38点、P<0.001)。
CAPS-5 30%以上改善でも有意差、68.5% vs. 48.2%
副次評価項目についても、ブレクスピプラゾール併用群ではプラセボ群と比べ、投与10週時点における臨床全般印象-重症度評価尺度(CGI-S)スコアの投与1週時点からの変化量(臨床医による評価)、投与12週時点における心理社会的機能の簡易評価尺度(B-IPF)総スコアのベースライン(試験開始前)からの変化量(患者による自己評価)が有意に大きかった(ともにP=0.002)。
また、10週時点で臨床的に意味のある改善とされる30%以上のCAPS-5総スコア改善を達成した患者もブレクスピプラゾール併用群で有意に多かった(68.5% vs. 48.2%、P<0.001)。
安全性はブレクスピプラゾール単剤の既報と一致
ブレクスピプラゾール併用群で発現率が最も高かった治療関連有害事象(TEAE)は悪心(ブレクスピプラゾール併用群12.2% vs. プラセボ群11.7%)、次いで疲労(同6.8% vs. 4.1%)、体重増加(同5.9% vs. 1.5%)、傾眠(同5.4% vs. 2.6%)の順だった。 なお、TEAEの大部分は軽度~中等度だった。
有害事象による投与中止率は、プラセボ群の10.2%(196例中20例)と比べてブレクスピプラゾール併用群では3.9%(205例中8例)と低かった。ブレクスピプラゾール+セルトラリン併用の安全性プロファイルは、ブレクスピプラゾール単剤の承認済み適応症におけるプロファイルと一致していた。
以上の結果から、Davis氏らは「ブレクスピプラゾールとセルトラリンの併用療法は忍容性が良好で、PTSDに対して有効な新規治療法となる可能性が示唆された」と結論している。
(医学翻訳者/執筆者・太田敦子)